古写真やアルバムなどの「記録写真」が面白い 古書店「日月堂」のコレクションを誌上公開!

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大新京建設画帖
1937(昭和12)年。発行は大新京建設画報編纂所。満州・新京の第1次計画完成を記念して刊行。印刷を手掛けた大正写真工芸所は絵葉書制作で知られた和歌山の会社だが、当時は朝鮮や満州でも活動していたという。「何もないところに、自分たちの権力でこれだけのものができたってことを、写真を通して示したかったんでしょう」(鳥原)(写真:尾田信介)

鳥原:また、戦前までは写真師が大きな仕事をしていた。工房にスタッフを抱えて、撮影だけでなくデザインまで一括して請け負ったりしていたんですね。そういう写真師たちが、企業や団体から依頼されて仕事をしていた。

佐藤:パンフレットや社史、卒業アルバムの写真なども、写真師の活躍の場だったんでしょうね。創作的意図より〝先鋭的なセンス〟がものを言う。そうした仕事が多いように思います。

鳥原:一流の写真家が撮ると、普遍性が出てしまう。でも、ちょっと俗なものが入っているほうが、時代がわかったりしますよね。撮影者が見せたいものと、意図せずに写ってしまったものが混在していて、そこが面白い。写真は撮った瞬間から古くなりますけど、つねに未来に向けられているわけで、時間が経つほど意図や文脈が忘れられ、違う部分が浮かび上がってくる。

佐藤:公式の歴史からこぼれ落ちるものが大事なんですね。オリジナルプリントや高価な写真集から外れたケモノ道が、私にとっては一番面白い。

鳥原:砂金を探しているみたいな(笑)。

日常レベルの歴史を伝えたい

大阪三越のカタログ     1936(昭和11)年。三越大阪店のP R誌兼商品カタログ

佐藤:記録写真は本当に捨てられつつあるので、いまの段階で誰かがストップをかけないと本当に危ないです。大学や研究所がアーカイブを作ってくださればいいんですけど、写真は歴史史料としての扱われ方が定着していないのではないでしょうか。

鳥原:「写真民俗学」というジャンルを作るということかもしれませんね。宮本常一は例外的に写真を残しましたし、濱谷浩や芳賀日出男のような民俗学写真はありますけど、結婚式や葬式、祭りといった場面に片寄りがちで、日常風景っていうのは特別な被写体になりづらいし、残りづらい。

佐藤:今回ご紹介した都立駒場高校の生徒のアルバムなんて、本当にいいですよ。街頭のスナップなんですが、進駐軍もいれば路上で商売しているおばさんもいて、その周りで子どもたちが遊んでいる。私が幼い頃に見ていた、そしていつの間にか消えてしまった風景が鮮明に記録されていて、切なくなってきます。

大阪高等医学専門学校卒業アルバム 1937(昭和12)年。同校は大阪医科大学の前身。制作は結城写真館。「これも細谷真美館の仕事。記録と言いながらも、罫線や切り抜きを加えることで、センスを主張しているところが面白い」(佐藤)(写真:尾田信介)

鳥原:これは見飽きないですね。背景の看板まで読んでしまう。

佐藤:いまからでも個人史に興味を向けないと、日常レベルの歴史がまったくわからなくなるかもしれないと心配します。このあいだ、あるお宅でアルバムや日記帳を全部捨てようと思うと言われて見に行ったんです。個人史を扱えるのって実は、古本屋だけなんです。それで、断捨離なんて言われるたびに飛んで行きたくなってしまうんですよね。

鳥原 学(とりはら まなぶ)/写真評論家。1965年大阪府生まれ。近畿大学商経学部卒業。1993年から写真弘社、写真ギャラリー「アート・グラフ」運営担当。2000年からフリーに。日本写真芸術専門学校、東京ビジュアルアーツ講師を務める。著書に『時代をつくった写真、時代がつくった写真――戦後写真クロニクル』『日本写真史(上・下)』『写真のなかの「わたし」 ポートレイトの歴史を読む』など。2017年日本写真協会賞学芸賞。

佐藤真砂(さとう まさご)/古書店「日月堂」店主。1961年生まれ。ディベロッパー、PRプロダクションを経て、1996年に大岡山に古書店を開店し、2002年に南青山に移転。1920~1930年代の都市風俗、デザイン・芸術運動関係を中心に扱う。各種印刷物から個人の残した記録まで、書籍にとらわれない品揃えが特徴。

注:商品は掲載時に品切れになっている場合もあります

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