古写真やアルバムなどの「記録写真」が面白い

古書店「日月堂」のコレクションを誌上公開!

東京・南青山の「日月堂」で、オリジナルの棚に収納された「紙モノ」(写真:尾田信介)

古い写真やカタログ、個人のアルバムなど、貴重な写真資料を多く揃え、写真評論家の鳥原学さんをはじめとする研究者や、コレクターからの信頼も篤い南青山の古書店「日月堂」。鳥原さんと店主の佐藤真砂さんに、ふたりを夢中にさせる記録写真の魅力についてうかがった。

歴史からこぼれた写真の魅力とは?

鳥原学(以下、鳥原):視覚文化って、記録写真をベースにしていることが案外多いんじゃないかと思うんです。日月堂さんにうかがうと、それがよく見えてくる。

本記事は『東京人』2018年4月号(3月2日発売)より一部を転載しています(書影をクリックするとアマゾンのページにジャンプします)

佐藤真砂(以下、佐藤):うちは1996年に店を開いたんですが、古本の市場に行くとダンボール箱の中に得体の知れない「紙モノ」がありまして。入札用の封筒には「諸々」って書いてある(笑)。その中身を見て視覚的な資料の意味に気づいたのが始まりですね。個人の写真アルバムへの興味もその頃から。以来、芸術的なものは専門店におまかせしてやっています。

鳥原:すごいピンポイントですよね。当時は安かったでしょう?

佐藤:アルバム1冊500円とか(笑)。それが最近は、想像だにしなかった値段がつくようになってきました。

鳥原:写真というのは作家に即して語られがちですが、写されたモノから読んでいったほうが実は深いことがあります。たとえば科学写真というジャンルは昭和15年頃から盛んになって、中谷宇吉郎(なかやうきちろう)の雪の結晶の写真が写真雑誌に載ったりするんですが、なぜかというと外で撮れないからなんですね。

佐藤:戦時体制の影響で、撮影できないものが増えたと。

帝国ホテル英文パンフレット            年代不詳(戦前)。海外からの宿泊客向けのパンフレット。ライト館を軸に明治神宮や二重橋も紹介。「海外の眼を意識して、ハイセンスに見せなくてはいけない、というコンセプトで作られているのがよくわかります」(佐藤)(写真:尾田信介)

鳥原:雑誌の編集部が大政翼賛会を訪ねて、何を撮ればいいか質問するという記事もあります。当時の報道写真とは別のところで、アマチュアはそのような方向に振り向けられ、結果的に戦後の科学写真につながっていったりするわけです。ですから写真家がやっていることは上澄みで、それを支えている構造がある。記録写真を見ていると、そのことがよくわかってきます。

佐藤:芸術性が認められない印刷物の中にも、面白いものがあるということですね。

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