この統計は2011年の統計なので、過払い金バブルが反映されている。過払い金バブルが下火となった現在ではさらに状況は厳しくなっているはずだ。
地方で修習を行い、なおかつ都会志向が強くない新人は、修習地の教官のツテで地元の法律事務所での就職を志向する。給与は支給されないノキ弁扱いも多いが、それでも案件の紹介もしない、指導もしない、などというほど突き放された扱いではない。
ただ、それでも地元企業の顧問業務など、既得権を押さえている地元の大先生も徐々に兵糧は細りつつある。さらに兵糧が細れば、今のように新人の面倒を見る余裕はなくなるだろう。地方のロートルの懲戒件数増は、そんな地方の将来を先取りしたものである可能性は高い。
借金だけではなくなる?ベテラン弁護士堕落のきっかけ
そもそも弁護士は何をきっかけに堕落するのか。ヒントになりそうなのは、かつては十数名規模の事務所の所長だったG弁護士がこの20年間にたどった道だろう。
G弁護士のつまずきのきっかけは、平成バブルである。バブル期にあちこちから投資商品やら絵画やらを奨められ、銀行から借金をして購入したものの、バブル崩壊後、その大半の価値が大きく下落し、借金だけが残った。
まさに貧すれば鈍する。顧問先をだまし討ちにする行為に手を染め始めたのが1990年代。不安を感じたイソ弁が大挙して事務所を辞めたのが、かれこれ12年ほど前。
旅行代理店業務も手掛けていた顧問先に愛人連れの海外旅行を無心した挙げ句、空港でビザ取得手続きに不手際があって出国できなくなると、この顧問先で大立ち回りをやるといった蛮行にも及ぶようになった。
結局、3回の業務停止処分を受け、残ったイソ弁数名と弁護士法人を設立して弁護士を続けたものの、その弁護士法人も事件放置で1カ月の業務停止処分を受けた。
この弁護士法人に所属していた弁護士は別の事務所を立ち上げたため、今、日弁連のデータ上、G弁護士は所属事務所欄が空欄になっている。
平成バブル崩壊で狂った弁護士は数多いと言われる。弁護士にとって、破産は弁護士資格の喪失に直結するので、破産で借金から逃げるということができない。したがっていつまでも借金の整理がつかないというジレンマを抱える。
今、主に懲戒の対象になっているのは、平成バブル当時、すでに弁護士になっていた年代であり、そもそもの堕落の起点が平成バブル当時に背負った借金だったという可能性は高い。
だが、業務量の収縮が原因で不法行為に手を染める弁護士は、すでに増え始めているのかもしれない。丸の内にごく少人数のオフィスを構え、企業の顧問で食いつないで来たものの、昨今の法改正ラッシュにまるでついて行けない、不勉強な「大先生」たちが食い詰める時代はもう目の前まで来ている。
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