日本政府観光局(JNTO)のデータによると、2017年に日本を訪れた外国人旅行客は2869万人で過去最高を記録している。確かに、筆者が通勤で利用する東京駅でも、外国人旅行客の姿を目にしない日はない。しかも日本の団体旅行のようにリタイアした高齢者ではなく、むしろ幼い子どもを連れた家族連れだったり、大きなリュックを背負ったグループだったり、明らかに現役世代と思しき若い人たちが大半だ。きっと彼らは、職場の有給休暇を長期で取得し、日本を訪れているにちがいない。ひるがえって日本人はどうか。
周知のとおり、日本人の有給休暇取得率の低さはかなり以前から指摘されている。航空券やホテルの予約サイトを運営するエクスペディアが毎年発表している「有給休暇・国際比較調査」の最新2017年版によると、日本の有給休暇取得率は50%で、調査した30カ国中最下位という結果となった。この調査は2008年以降毎年行われており、2014年と2015年を除けばつねに最下位だ(2014年と2015年は韓国が最下位で、日本は下から2番目)。
日本人の有休取得率が低い根本原因
日本人はどうしてこうも有給休暇をとらないのか。同調査によると、有給休暇取得に「罪悪感を感じる」人の割合が日本は63%と最も高い。そのくせ、転職する場合に重要視することの第1位が「より多くの有給休暇が取得可能」というのだから、どこか矛盾している。
2017年7月に格安スマホを提供するBIGLOBEが発表した「有給休暇に関する意識調査」によると、有給休暇を取得しづらい理由として「職場に休める空気がない」が33.6%で1位となった。以下、「自分が休むと同僚が多く働くことになる」「上司・同僚が有給休暇を取らない」と続く。こうしてみると周囲に対する配慮から(休みたくても)休まないという、「和」を重んじる日本人の気質が如実に伝わってくる。
「有給休暇を取りやすくするために変えるべきは?」との問いに対しては、「会社の制度」という回答が全体の3分の2に達し、「個々の意識」という回答の倍になっていることからも、個人の裁量や自主性に任せるだけでは取得率はいっこうに上がらないことが想像できる。
現状、すでに多くの業界・企業で人手不足が常態化し、かつグローバルで人材の争奪戦が激しくなってきている。そういう環境下にあって、有給休暇が思うように取得できない状況が続けば、優秀な人材の獲得競争で大きく出遅れることは必至で、死活問題に直結するといっても、もはや過言ではなくなりつつある。
したがって、政府も企業も有給休暇の取得率アップに大きなエネルギーを注がざるをえない。有給休暇の取得は、働く者の権利である。そして、個人がそれぞれのライフステージに応じた仕事と生活のバランスを実現させるためにも重要である。そうであれば、むしろ必要なのはわれわれ日本人の「個々の意識」の変革のほうであるような気がしてならない。
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