「投資初心者向け金融商品」がダメな根本理由 「リスク」の取り方はどうすればいいのか

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まず自分の資産運用全体の中でリスク商品の割合を決め、残りは定期預金などの無リスク商品(価格変動のない商品)で運用すればいいのです。まったくリスクを取りたくなければ、そもそも投資はしないほうがいいし、少しぐらいのリスクは取ってみようということであれば自分の金融資産全体のうちの10%とか20%を、リスク資産に回せばいいのです。

アメリカの経済学者であるジェームス・トービンが提唱した資産運用理論の中に「分離定理」というのがあります。これは簡単に言えば「リスク許容度が高い人も低い人も、リスク資産のポートフォリオの中身は同じものでよく、リスクの度合いはそのほかの安全資産をどれぐらい持つかで調整すればよい」というものです。つまり初心者向けのポートフォリオなどというものは存在せず、自分のリスク許容度に合わせてリスク資産の割合を決めればよいというだけなのです。

「リスク限定型投信」が割高な理由

リスク限定型投信が、商品としていかに問題があるものか、具体的にある投資信託「A」の中身を見てみましょう。Aの中身を見ると、全体の資産配分の中で内外の株式に10%程度、残りは短期金融商品となっています。そして、この投資信託Aの信託報酬(運用管理費用)は0.8%を上回っています。

仮にこの投資信託Aを100万円買えば、毎年支払う信託報酬は8000円を超えることになります。一方、同じ100万円でも、10万円分だけ国内と海外のインデックス投信を購入し、残りの90万円を預金にしておけばどうなるでしょう。この場合、かかるコストは、ローコストのインデックス投信なら0.2%ぐらいの手数料のものもたくさんあります。すなわち10万円分の0.2%ですから200円程度の運用管理費用を払えばいいわけです。リスク限定型投信Aを購入する場合と比べると手数料は40分の1で済みます。

もちろん、どちらの運用成績が良くなるかは株式部分の運用次第ですから一概には言えません。しかしながら、コストだけは確実に安くなるのであれば安いものを選ぶほうが賢明と言えるでしょう。これは確定拠出年金において商品を選ぶ際にも言えることです。「自分で運用しろといってもどうやっていいのかわからないだろうから、初めての人にはリスクの低い商品が適している」という考えから、リスク限定型投信を提供しているところもあります。しかしそんな手数料の高いものを購入するぐらいなら、前述の方法のように簡単に自分で組み合わせれば済む話なのです。

先ほど出てきたトービンの「分離定理」は、最適なポートフォリオを1つ決めれば、後は無リスク資産の割合を決めるだけでいいというシンプルなものです。

では、ここで言う最適なポートフォリオとは、いったい何を指すのでしょうか? 私は世界の市場全体を、それぞれの時価総額の割合で構成するポートフォリオが最も合理的だと考えています。世界の中には成長する市場も停滞や衰退する市場もありますが、それがいったいどこなのかは、事前にはわかりません。でも世界の人口が増加し、人間の経済活動が行われていくかぎり、全体としては成長するからです。したがって市場全体を買っておく(日本だけではなく世界全体の)ことが合理的なポートフォリオだと思うからです。昔と異なり、現在であればそういうポートフォリオを1万円からでも購入できる投資信託がたくさんあります。

大事なので繰り返しますが、初心者だからとかベテランだからとかは関係なく、自分がどれだけリスクを取れるのかによって、投資信託などのリスク商品と預金などの割合を決めておけばよいだけです。これはとてもシンプルな方法ですが、往々にして金融商品はシンプルなほうがコストも安いしわかりやすいという面があります。「これは初心者向け商品です」と言われても素直に信じるのではなく、きちんと中身を調べることが大切ではないでしょうか。

大江 英樹 経済コラムニスト、オフィス・リベルタス代表

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おおえ ひでき / Hideki Oe

大手証券会社で25年間にわたって個人の資産運用業務に従事。確定拠出年金ビジネスに携わってきた業界の草分け的存在。日本での導入第1号であるすかいらーくや、トヨタ自動車などの導入にあたりコンサルティングを担当。2003年から大手証券グループの確定拠出年金部長などを務める。独立後は「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるよう支援する」という信念のもと、経済やおカネの知識を伝える活動を行う。CFP、日本証券アナリスト協会検定会員。主な著書に『自分で年金をつくる最高の方法』(日本地域社会研究所)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)などがある。

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