総合電機業界の見通しは安定的《ムーディーズの業界分析》


■デジタル家電および半導体事業

これまで収益の圧迫要因となっていたデジタル家電や半導体事業で総合電機各社が構造改革を実施したことで、短期的には収益性の改善が見込めるであろう。2007年度に各社がデジタル家電および半導体事業を中心に大規模な事業再編を行ったことにより、2008年度にはこれらの事業セグメントにおける競争力と収益性の改善に寄与するであろう。しかしながら、これらの事業の競争環境は依然として厳しく、競争優位性の確保や収益性の安定化には時間を要する可能性があるとムーディーズはみている。また、このような事業再編への取り組みは、2008年以降はその規模や影響度が縮小していく可能性があるが、多角化されたポートフォリオを最適化していくためには、継続的に行われるであろう。

過去において各社がDRAM事業から撤退したことなどで、半導体事業の比重は低くなっているが、同事業の投資負担が相対的に高い東芝、富士通、NECでは、この事業に対する戦略が依然として信用力評価上の重要な要因のひとつとなっている。半導体市場は、パソコン、デジタル家電、携帯電話や自動車など、応用範囲が拡大しており、高い成長が見込める反面、需要や価格面での変動性が高く、競争環境も厳しい。また、技術開発や設備投資負担が大きいことも、事業の変動性を高めている。

積極化するM&Aおよび事業提携

大手総合電機各社は、全体の収益性を高めるために、事業の選択と集中を進め、不採算事業の収益改善を行ってきた。事業再構築や財務基盤の強化に関して、過去数年間で一定の成果をあげてきたことから、今後は成長に向けた戦略的な投資や事業提携などが経営上もより重視されることであろう。

事業提携や買収は、重点市場における競争力およびポジショニングを強化するために用いられる重要な経営戦略である。これまで、日本の大手総合電機の事業は、国内市場が中心であったが、国内市場は成熟しており、今後は高い成長が見込まれる海外市場での事業基盤の強化や事業拡大に向けた投資が増加していくであろう。

格付け動向

ムーディーズは国内大手電機業界において格付け対象としているのは、日立製作所(A1 安定的)、三菱電機(A1 安定的)、東芝(A3 安定的)、富士通(A3 ポジティブ)、NEC(Baa1 ポジティブ)である。事業の選択と集中によって、収益の安定性や財務指標が改善している三菱電機を2008年8月12日にA2からA1に格上げした。また、富士通とNECのポジティブな格付け見通しも、ITや通信事業への集中によって、収益性やバランスシートの改善が見込まれることが背景となっている。一方、東芝と日立の格付け見通しは安定的である。日立は薄型テレビ事業やHDD事業における事業再構築によって、収益性が回復している。東芝や主力事業の一つであるNANDフラッシュメモリー事業の変動性は高いものの、この事業の競争優位性と収益力を維持していくであろう。

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