萌え断女子が殺到するフルーツサンドの秘密 フルーツを使った商品は進化し続けている

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「これは僕の仕事の第2章。1つ目立つところが出てくれば、都市部はもちろん、地方の方々も注目してくれると思っている。そこから、果物業界が再度盛り上がる期待もあるのでは」と成瀬氏は分析する。

昭和育ちの成瀬氏は、店が忙しかった時代をよく覚えている。「幼い頃は、ひっきりなしにお客さんが来た。人手が足りなくて、小学生の僕が自転車でみかんを届けに行ったし、暮れももちろん手伝いをした。大晦日は夜中12時ぐらいまで仕事して、元旦も店を開けた。正月用にみかんを箱買いする人も多かったし、お歳暮、お中元やお使い物にフルーツが使われることが習慣としてあったと思う」。

果物加工品の可能性が広がっている

そんな状況が変わり始めたのが、バブル崩壊後。父には継がなくていいとまで言われた。売り上げは下がっているのに、経営に本気を出さない成瀬氏をハラハラしながら見ていたこともあるという。しかし、成瀬氏には圧倒的な強みがあった。真剣に遊んだ結果得た、業界を超えた幅広い人脈だ。たとえば、地方で公演をすることが多いミュージシャンの友達が、「地方でこんなイベントやったら面白いんじゃない?」と提案してくれることもある。

川崎にオープンしたフタバフルーツパーラーの店舗(撮影:今井康一)

フルーツサンドなど果物を使った加工品に力を入れるフタバフルーツの戦略は、時代にもマッチしていたと言えるだろう。フルーツサンドのブームは、ここ数年続くサンドイッチブームの余波と、果物加工品の人気が背景にあると考えられるからだ。

まず、10年ほど前から健康志向の高まりを背景に、都心でジューススタンドが増え始めた。これにグリーンスムージーの流行が続いたのと同時に、果物をたくさん使ったケーキやパフェが人気に。インスタの爆発的普及に伴う萌え断ブームで、サンドイッチからフルーツサンドまでが派手に生まれ変わって、再び注目を集めるようになった。

「生」の果物の将来は決して明るいとはいえない。食の選択肢が豊富になった今、相対的に高く感じられるうえ、「皮をむくのが面倒」と思われがちだからだ。しかし、健康意識が高まり続ける中、「果物を食べるべきだ」という意識は高まっている。それ以前に、果物には「見た目が楽しくてワクワクする」(成瀬氏)という側面もある。果物を使ったデザートや加工品は、むしろこれから伸びる本番を迎えるのではないだろうか。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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