10~20年後の医療では、膨大な遺伝情報を学習したAIが患者の遺伝情報を細かく解析し、個人レベルで最も適した治療や投薬を決めるという方法が当たり前になっているでしょう。そのうえで重要な役割を果たすのが、「薬」と「医療機器」のふたつの要素です。
新薬の開発コストが激減、格安な医療ロボットも
まずは「薬」に関しては、今のところ新薬を1つ開発するためには、1000億円以上の費用と10年以上の期間が必要であるのが常識となっています。ところが、AIの急速な発達が創薬の分野でも力を発揮するようになり、大幅な費用圧縮と時間短縮を可能にすることが徐々にわかってきています。その甲斐あって、さまざまな新薬が生まれる確率が格段とアップするだろうと期待されているのです。
たとえば、10~20年後のがんの治療を見通した場合、AIによって患者の遺伝情報を読み解き、異常な遺伝子を新薬で修復することでがんを簡単に治癒できるという方法が主流になっているでしょう。がん細胞が増殖する原因となる遺伝子を突き止めて、それを正しい状態に戻す新薬を投与するという治療方法が一般的となっているわけです。
自明のことですが、この治療方法はがんに限らず、あらゆる病気に対応することを想定しています。体への負担が大きい手術には頼らずに、できるだけ薬で治そうとする未来の医療は、患者にとっては非常にありがたいことであるといえるでしょう。
次に「医療機器」に関しては、患者の病状に有効な新薬が見当たらない場合は、広範にわたって新しいタイプの医療機器が活躍する余地が大きいといえそうです。たとえば、未来の手術室では今より進化した手術支援ロボットに対して、AIが手術の手順を注意点も含めて詳細にナビゲートしたうえで、VRが患者の体内を可視化して1ミリ以下のがんも逃さない技術を提供するという光景がありふれたものとなっているでしょう。
ダヴィンチは価格や維持費が高いため、導入しても採算が合わない病院が多かったのですが、今後10年以内に手術支援ロボットの低価格競争が起こり、ロボットを使う手術は広く普及が進むと見られているのです。
日本の高齢者数は2042年でピークを迎えると、それ以降はそれまでの増加ペースを上回るかたちで急激に減少していきます。それに加えて、AIやロボットが医師の仕事を奪っていけば、医師の供給過剰は予想以上に深刻になっていくはずです。
厚生労働省のある有識者検討会では、「2035年までに医療の需要は減少する」「2040年には1.8万~4.1万人の医師が過剰になる」という推計をまとめていますが、これはあくまで人口動態の推移だけを考慮に入れた推計であり、技術革新をまったく無視しているという問題を孕んでいます。
早ければ10年後に、遅くても20年後には、AIやロボットが医師の仕事の8割程度を代替することができるようになり、必要とされる医師の数が劇的に減るのは避けられない情勢にあるというわけです。
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