漫画「君たちはどう生きるか」に感嘆するワケ 80年前の名作を読んだ感想が成長の証だ

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君たちはどう生きるか』は、児童文学者の吉野源三郎による児童小説だ。ただ、児童小説と言ってもまったくあなどれない。

旧制中学二年(15歳)の主人公である本田潤一ことコペル君は、学業優秀でスポーツも卒なくこなし、いたずらが過ぎるために級長にこそなれないが人望はないではない。父親は(亡くなるまで)銀行の重役で、家には女中が1人いる。同級生には実業家や大学教授、医者の息子が多く、クラスの話題はスキー場や映画館、銀座や避暑地にも及ぶ。コペル君は友人たちと学校生活を送るなかで、さまざまな出来事を経験し、観察する。各章のあとに続いて、その日の話を聞いた叔父さんがコペル君に書いたノートという体裁で、「ものの見方」や社会の「構造」、「関係性」といったテーマが語られる、という構成になっている。――wikipedia『君たちはどう生きるか』より

『漫画 君たちはどう生きるか』では、コペル君が体験する出来事がマンガで描かれ、それを見聞きした叔父さんのノートをテキストで読むことができる。読者はコペル君の体験を視覚的に理解したうえで、叔父さんが紡ぐ本質をついた言葉に触れることができるというわけだ。 原作を一度読んだうえで漫画版に触れると、なぜ80年間もこの手法でリミックスされなかったのか不思議になるくらい自然で、読みやすい。

しかし、その読み味はまったく損なわれていない。

自分が原作『君たちはどう生きるか』を初めて読んだのはたしか、2年程前だ。 社会人になりたてのころ、かねてよりタイトルだけは知っていたこの作品を手に取った。細かい感想は忘れたけれど、覚えているのは「子どものころに、こんな大人がいたらよかったなぁ」というコペル君への羨望だ。

叔父さんのように、少年を少年として侮らず、一人の人間として扱い、安心して自分の心の言葉を委ねられるような存在が身近にいるというのは、どれだけいいことだろう。もしそんな人がいたなら、自分はもっとまともな人間になれていたんじゃないかしら、と。

自分の成長を実感できる「二度目」をくれる作品

『漫画 君たちはどう生きるか』の感想は違った。 少年を少年として侮らず、一人の人間として扱い、安心して自分の心の言葉を委ねられるような大人になりたいと思った。「叔父さんのような、大人になりたいよな」と思った。

『漫画 君たちはどう生きるか』(マガジンハウス)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

変えられない過去を何となく後悔するのではなく、未来にこう在りたいと、前向きな気持ちになって読み終えることができたのだ。以前に読んだときよりもたぶん少し、大人になった。この変化はきっと、成長なんじゃないだろうか。こんな素晴らしいことを教えてくれる作品は名作に違いない。

間違いなく、自分の成長を実感できる「二度目」をくれる作品だ。かつて原作に触れた人は、この漫画版を読むことで、『君たちはどう生きるか』がより忘れられない作品になるだろう。

そして読んだことがない人は、ぜひこの『漫画 君たちはどう生きるか』を初めての出会いとして、これからの成長に気づくための指標にしてほしい。

(文:宮﨑 雄 @zakimiyayu)

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