なるほど、北朝鮮の目には、自国が核保有国になろうとしていることに対して韓国に新たな敬意──あるいは怖れ──が芽生えたと映っている。北朝鮮の人々は、核開発のせいで五輪参加が危ぶまれたとは考えず、反対に核開発をしているからこそ北朝鮮は五輪に招かれたと受け止めるだろう。
平昌五輪参加の意味を、北朝鮮は次のように理解しているのかもしれない。国際的な孤立は一時的なものであり、核保有国として完全に認知されるまでの道のりに課される通行料金のようなものにすぎない。しばらくすれば、韓国以外の国も列を成して北朝鮮との外交交渉に応じるだろう、と。
文大統領は五輪後、試練にさらされる
だが、文大統領は「五輪の精神」によって韓国政府が丸め込まれることはない、との立場を明確にしている。平昌五輪の安全性について多数の国から疑問が投げかけられてきたのがこの1年であり、韓国の目標は主催国として平昌五輪を成功させることにある。北朝鮮の期待に応えることではない。つまり、五輪が閉幕すれば、北朝鮮には非難と孤立の長い冬が待っている、ということだ。
文大統領は、北朝鮮に対して過去最大規模の制裁を加える国際社会との関係を維持していかなければならない。その意味で、同氏は五輪後、即座に大きな試練にさらされることになる。延期されている米韓合同軍事演習の実施計画を決めなければならないからだ。
もちろん、北朝鮮はこれまでと同様に反発するだろう。中国やロシアも反対に回り、五輪をきっかけに進んだ雪解けムードを台なしにしたとして、米国を非難してくる可能性がある。
そうはいっても、演習を伴わない軍事同盟は楽器を持たないオーケストラのようなものだ。文大統領にも、このことはわかっているだろう。いろいろと難しい問題はあっても、米国ほど韓国にとって重要な同盟国はほかにない。
文政権のような革新系の政府であっても結局は、米国との関係を維持し、守っていけることをつねに国民に示していく必要があるのだ。これまでのところ、文氏にはそれができている。
(本稿は平昌五輪開幕前に執筆されたものです)
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