映画「チャーチル」が現代に与える示唆の数々 東洋経済オンライン読者限定試写会を開催
国民の命を危機にさらすことは避けたいが、全体主義の名の下に、近隣諸国へのを続け、ヨーロッパの平和秩序を乱すナチス・ドイツに妥協することは、民主主義の敗北を意味する。一方、ドイツ軍の侵攻は容赦なく進み、政権内ではハリファックス子爵たちが容赦なく揺さぶりをかけてくる――。
この緊迫した情勢の中で彼に降りかかる苦悩、葛藤。そんな八方ふさがりの状況の中で、それでも信念を貫こうと立ち向かった彼を支えたものは何だったのか? 手に汗握る描写の連続で、125分という上映時間はあっという間に過ぎてしまう。
作中では、フランス北端ダンケルクに追い詰められた、英仏連合軍40万の兵士を救出する「ダンケルク撤退作戦」についても、チャーチル側の視点で描かれている。昨年、そのダンケルク撤退作戦を忠実に映像化したクリストファー・ノーラン監督の映画『ダンケルク』が公開されているが、まさに『ダンケルク』の“合わせ鏡”的な作品として観る楽しみ方もできる。もちろん『ダンケルク』を観ていなくても楽しめることは言うまでもない。
映画『ダンケルク』を別視点で見る
チャーチルを演じるのは、『レオン』(1994年)での強烈な悪役や、「ダークナイト」シリーズ(2008年~)のゴードン警部補役などで知られる、ゲイリー・オールドマン。しかし、普段のオールドマンのスリムなシルエットを知る人からすると、この映画に登場するチャーチルは、まったくの別人であり、驚いてしまう。この映画では、ぽっちゃりと太った風貌、葉巻と酒をこよなく愛し、辛辣でありながらも、ウイットとユーモアを忘れないチャーチルになりきっている。
また、劇中で見せるチャーチルの演説も見どころのひとつだ。演じたオールドマンは、「チャーチル自身が書いた演説は、英語という言語の中で最もすばらしく、その言葉の数々を発したいと思った。装飾過剰な文体へと逃げ込まず、過剰な比喩を使っていない。彼は直接語りかけている人々が誰かを理解していた。そして自分が発する言葉が国民の心にしっかり届くように心掛けていた」と、作家や従軍記者もしていたチャーチルの表現力をそう評価している。
オールドマンは、チャーチルという実在の人物になりきるために、思考、言葉のアクセントやなまり、立ち居振る舞いはもちろんのこと、肉体的にもチャーチルになりきらなくてはならないと考えた。そこでオールドマンが頼ったのは日本人特殊メークアーティストの辻一弘だった。
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