ユニクロで働けば、決断力は鍛えられるか 偉大だが苛酷な会社、ファーストリテイリング

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誰しも100%正しい決断をすることはできない。まず決めて動く、動いたら誰よりも早く修正する。成功するという保証はないが、うまくいけば御の字。うまくいかなくても、失敗から学んで、再度決断をして修正する。ユニクロが実践している「決断力と修正力の考え」自体は、もっと評価されてもよいはずだ。

「起業してうまくいかないことも多いけれど、まずやってみて、うまくいかなくてもそこから何とかする。ユニクロで学んだことは、今も生きていますよ」と、夏樹の彼も笑う。

「筋トレのしすぎ」は、逆に身体を壊しかねない

もっとも、心身ともに過剰すぎるプレッシャーが続いたり、会社に泊まり込みで週に1度しか帰れない生活(これはユニクロではなく、筆者経験談)をずっと続けることはできない。比較的若手のうちに思い切って「決断筋トレの環境に飛び込む」ことは、成長につながるという点では良いかもしれない。だが、環境が過酷すぎてそこについてくる人がいないような会社は、ただの自己満足といわれても仕方がない。

ユニクロの新卒採用ページには、「WORK IS LIFE」とある。「仕事とは、自分がどう生きるか」。「積極的に生き、理想をもって、こうありたい、こうあるべきだと求め続けてほしい」などという、メッセージが掲げられている。
しかし、こうありたいという姿を実現するには、心身ともに健康であることが前提だ。社員は、「生身」の人間だ。在庫処分ができる服とは違う。世界で躍進する企業として、成長・収益とのバランスを取りつつ、従業員満足度を高めるという決断や努力を、ユニクロはどこまで本気でできるだろうか。結果を見ながら、修正し続けられるだろうか。

片や、読者にとっては、どういう働き方が理想だろう?小さな決断をするきっかけとして、ぜひ考えていただきたい。

徳谷 智史 エッグフォワード 代表取締役

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とくや さとし / Satoshi Tokuya

京都大学経済学部卒業。企業変革請負人。組織・人財開発のプロフェッショナル。大手戦略系コンサル入社後、アジアオフィス代表を経て、「世界唯一の人財開発企業」を目指し、エッグフォワードを設立。総合商社、メガバンク、戦略コンサル、リクルートグループなど、業界トップ企業数百社に人財・組織開発やマネジメント強化のコンサルティング・研修など幅広く手がける。近年は、先進各社の働き方改革、AI等を活用したHR-Tech分野の取り組みや、高校・大学などの教育機関支援にも携わる。趣味はハンドボール、世界放浪等。ご相談・取材・執筆・講演依頼はこちら

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