仮想通貨NEM流出、問われる取引所の安全対策 コインチェックに同情の声が少ない理由

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本誌は主要取引所の運営会社10社を対象に、緊急アンケート調査を行った(下表)。コインチェック同様、ホットウォレットかつ非マルチシグで保管されている仮想通貨の有無を聞いたところ、回答があった6社のうち「ない」と断言したのはQUOINEだけだ。

同社は、「コールドウォレットで100%管理している」とするが、このような取引所はむしろ少数派だろう。利用者からすると、即時送金などの利便性は取引所を選ぶ際のポイントになる。一定量をホットウォレットで管理することは取引所の判断として理にかなっている。

実際、コインチェックと取扱高で首位を争うビットフライヤーは、「ビットコインのように入出金の多い通貨は8割をコールド、2割をホットに置くという運用をしている」(金光碧取締役)。

ビットポイントジャパンも、「コールドでの保管比率は6~7割。同比率を9割以上にするというのは非現実的」(小田玄紀社長)とのスタンスだ。

なおホットウォレットで保管している分については、ビットバンクのように「自己資本で賄える額しか入れない」(廣末紀之CEO)など別途策を講じているところもある。

リスクはゼロにできない

ただ改善の余地は大きい。今回の件を受けてビットフライヤーは、ビットコインと違って取引量の少ない通貨についても、「ビットコイン同様に8割はコールドに保管する」(金光取締役)ことにした。

マルチシグの採用については、確認可能な複数社の状況を見ると途上段階だ。通貨によって技術的なハードルが異なるという事情はあるものの、この点は今後の課題だろう。

ホットかコールドかという以前の問題もある。ビットポイントの小田社長は「安全な自社専用のプライベートサーバーで運営しているのか、アドレス(口座番号に相当)と秘密鍵を別のサーバーで管理しているのかが重要」と話す。

リスクをゼロにすることは不可能だ。だが、通貨とうたう以上は安全や信用が大事。仮想通貨取引所が経済社会に根付くためには、コインチェックの件を教訓とし、襟を正す機会にしなければならない。

二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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緒方 欽一 東洋経済 記者

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おがた きんいち / Kinichi Ogata

「東洋経済ニュース編集部」の編集者兼記者。消費者金融業界の業界紙、『週刊エコノミスト』編集部を経て現職。「危ない金融商品」や「危うい投資」といったテーマを継続的に取材。好物はお好み焼きと丸ぼうろとなし。

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