ナイトタイムエコノミーって何だろう?

観光資源化する「東京の夜」

さて、ここからはさらに、実際に進んでいるナイトタイムエコノミーの取り組みについて紹介していこう。 訪日外国人からの人気がトップクラスの渋谷区は、前年比120%の体験満足度を獲得することをコンセプトに、長谷部健区長と渋谷区観光協会を中心としてさまざまな取り組みを行っている。

ハロウィンの夜に人であふれる渋谷駅前(提供・渋谷区観光協会)

その渋谷区の取り組みに欠かせないのは、2016年に誕生した渋谷区観光大使ナイトアンバサダーの存在だ。 ヒップホップ・アクティビストのZeebra氏、FIG&VIPERディレクターでDJの植野有砂氏、TRANSIT GENERAL OFFICE代表の中村貞裕氏が、渋谷の夜の魅力を発信。三人がお勧めするナイトコースも掲載された渋谷区観光協会作成のナイトマップは、希望者に無料で配布されているが、各所から問い合わせが来るほど大人気になっているそうだ。お店の紹介だけでなく、カードやWi-Fiは使えるか、メニューは英語対応がされているのか、終電は何時かなど、訪日外国人が本当に知りたい情報が掲載されていることも人気の理由なのだろう。

渋谷区観光大使ナイトアンバサダーであるZeebraさんが会長を務める「クラブとクラブカルチャーを守る会」のメンバーなどによって行われている、 渋谷のまちのゴミ拾いの様子。 ハロウィンの後などにも、 自主的にゴミ拾いをする人が増えたという(提供・渋谷区観光協会)

その他、渋谷にあるクラブを低価格で回遊できる、企業が主催するエンタメフェスや、クラブとトレーニングを掛け合わせたスポーツイベントなどにも協力しているが、一番の功績は、断絶されていた夜と昼の時間帯をつなげたことではないだろうか。渋谷区観光協会の堀恭子氏は、「ハロウィンで盛り上がった翌朝、ごみ袋を手に、渋谷で夜働く人と昼働く人、イベントを楽しんだ人、さまざまな人が一緒にごみ拾いをするようになりました。これは、我々が強要したのではなく、自然と始まったことです。昼と夜がお互いを知らないために生まれる苦情も、交流があれば解決策が生まれます。今後は、さらにこの交流を深め、住民の方々の立場を大切にしながら、夜の時間帯を盛り上げる施策をもっと考えていきたい」と話してくれた 。

豊島区が進めるアフター・ザ・シアター

昨年の12月27日、豊島区の夜間経済を考える「第1回豊島区アフター・ザ・シアター懇談会」が開催された。

「国際アート・カルチャー都市構想」を進める同区では、2020年に向けて「劇場都市」を将来像に掲げ、8つの劇場を有する「Hareza(ハレザ) 池袋」の整備をはじめ、池袋駅周辺の公園の劇場化など、さまざまなプロジェクトが進行している。

同懇談会は、劇場で演劇やコンサートなどを楽しんだ後も、安心安全にその余韻を楽しめる場(アフター・ザ・シアター)の実現を目的としたもので、 年度内にもう1度開催し、4月までに一定の提言をまとめる予定だという。

豊島区文化商工部国際アート・カルチャー都市推進担当課長の馬場晋一氏 は、「これから豊島区では、2019年東アジア文化都市や、2020年東京オリンピック・パラリンピックの文化プロジェクトなど、国際的なプロジェクトが展開される中で、国際都市機能の充実が必要となった。劇場都市・豊島区がめざす夜の時間の大きなテーマ は、観劇・鑑賞後の"余韻"です。あわせて、これまで取り組んできた安心・安全のイメージ。文化のまちづくりを進めていく過程で、このイメージが根づき始め、大型の商業施設も女性向けが増加。企業の参入も相次いでいる」と話す。

もともとあったモノを活かすのではなく、まったく新しい街としてスタートした街の代表が歌舞伎町だ。1990年代後半、働いている人たちも表通りしか歩けなかったほど治安の悪いまちだった歌舞伎町は、石原慎太郎元都知事が行った都市浄化作戦を機に、整然としたまちに生まれ変わった。

当時を知る人からは、「クリーンにはなったが、東洋一の繁華街ではなくなった」「特色がなく、どこにでもあるまちになってしまった」との声もあるものの、昨年の夏にVR(仮想現実)を体験できるエンターテインメント施設「VR ZONE Shinjuku」がオープンし、カルチャーを楽しむまちへと大きく舵をきった。 負の部分を切り落とすために、一気に除草剤をまいてしまった都市浄化作戦。その後、新たなまちが出来上がるまでに、とてつもなく長い年月がかかることを教えてくれた事例だろう。

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