消費増税でまた混乱 法人減税強行の内幕 消費増税決断も、なぜか減税メニューが急浮上

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確かに日本の法人税率は主要国に比べ高めだ。しかし、80年代半ばに英米が先陣を切った法人税率引き下げは課税ベースの拡大とセットであり、税率を下げても法人税収はむしろ増加するのが世界のトレンドになっている。日本でも12年度の税制改正で法人税率を引き下げたとき、民主党政権が租税特別措置を見直し、課税ベースの拡大を実施した。

安倍政権が真剣に法人税率の引き下げを考えるなら、産業界の抵抗が強い課税ベース拡大に踏み込んだ姿勢を見せるべきだが、今のところそのようなそぶりはない。法人減税を消費増税のドサクサに紛れて実施してしまおうという前のめりの雰囲気が漂う。

与党はどう動く?

「復興特別法人税の廃止は、被災地や国民の理解を得られるのか」。9月24~25日に開かれた自民党や公明党の税制調査会では、安倍政権に対する異論が相次いだ。

「消費税で生活者は増税なのに、なぜ企業だけ減税なのか」という批判も根強く、自民党の野田毅税制調査会会長は「所得税をどうするかという問題もある」と記者団に語った。

高支持率を維持する安倍首相の意向は最終的には通る公算大だが、与党から「生活者にも還元を」との声が強まれば、新たな財政拡張策が浮上する可能性も残されている。消費増税をめぐるドタバタ劇が拡大すれば「財政再建が急務」というメッセージは国民に届きにくくなる。

週刊東洋経済2013年10月1日号

野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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