こんな理不尽な事例もあります。農業の分野で起業した人たちが、地元の農作物を活用して独自開発した加工商品が人気商品になると「今後は組合事業として取り組んで、一括して販売する。地元のルールがあるから勝手にやってもらっては困る」と半ば強引に事業を横取りされる、といったことも起きたりしています。
本当に起業をしてその地域の課題解決をしてほしいのか。それとも、単にリスクを負わず、少ない予算で都市部から人が来てくれれば計画を達成するのでそれで良い、というのがホンネなのか。移住してくる若者たちの人生を第一に考えているとは思えない状況がそこにあります。
「地元のため、新しくやってくる起業家のため」を考えるのであれば、早期に事業で自立できるよう、地元調整などは誘致した地元の自治体や各種団体の側が、率先して行わなくてはならないのが当然です。むしろ、こうした支援の方が初期の予算支援などよりも、よほど大切です。「税金で経費を3年ほど支援する」などと言っても、そもそも事業に必要な売り上げを、頭から潰してしまっては、新しい事業は成功しません。そうなったら、地元で細々とした仕事を見つけるか、また別の地域に移住せざるを得なくなってしまうのですから。
外部から起業家を招く前に、やるべきことがある
(3)地方は誘致の前に「地元起業家」を高く評価しているか
起業家に対する「地方の覚悟・基本姿勢」を2つ挙げましたが、実はこの3つ目が一番大切かもしれません。地元で新たな事業に取り組む野心的な起業家は、どんな地域にも存在しているのです。
「山の上の蕎麦屋」「不利な立地のパン屋」「古い家屋を改装したゲストハウス」「自家焙煎をしているカフェ」など、すでに自分で事業を立ち上げている地元人は大勢いるにもかかわらず、なぜか地方では彼らのような人たちを「起業家」と呼ばず、地域の政策において、高い評価もしません。
人口が減っていくような困難な地域で、自ら事業を興して軌道に乗せている人は、独立心が豊かで、センスのいいことが多いのです。しかし、逆に言えば、そのような起業家ほど、旧来から続く「地元の論理」などについては、「配慮」よりも「本質的な意見」を言うことが多いものです。そのため、地方の政治、行政、各種団体関係者からは嫌われる傾向があります。「あいつは和を乱す、勝手なやつだ」「あいつだけが儲けてけしからん」といった扱いをされ、自治体は「起業家誘致に関する委員会」などにも呼ぼうとしません。
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