メガバンク3行の「人員削減計画」は甘すぎる AIで最も厳しい影響を受けるのは金融業界

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銀行などの金融機関と同じく、保険会社も人員削減の余地が大きいといえます。最近のアメリカでは、AIを活用して人手を必要としない保険会社の起業が増えています。生命保険にしても自動車保険にしても、加入手続きから保険金の支払いまで、スマートフォンのアプリを通したやり取りだけで完結するというサービスが広がり始めているのです。

AIやビッグデータを駆使することで、保険料の見積もりや保険の支払いを迅速にするというのが最大のメリットであり、ことのほかスマートフォンで簡単な質問に答えるだけの数分で保険に加入できるという手軽さが受けています。賃金が伸びていない若い世代を中心に、人件費などのコストを徹底的に抑えた割安な保険商品への人気度は高まっているということです。

そればかりか、顔を見れば寿命がわかるという技術を開発したベンチャー企業までが現れています。機械学習を重ねたAIがたった1枚の顔写真から、性別や年齢、かかりやすい病名、寿命までを割り出すことができるというのです。アメリカではすでにこのベンチャー企業のサービスを使い、顔写真から生命保険料の大まかな見積もりをする生命保険会社があるといいます。

また別のベンチャー企業では、AIが初期診断と健康管理を行い、病気を防ぐというサービスを開発し、そのサービスの導入を考えている生命保険会社もあるといいます。これらの事例が示すように、AIの技術力でコストを抑えることによって、保険料を大幅に下げることができれば、より多くの人が保険に加入できるようになるでしょう。

アメリカでの流れが、いずれ日本にも波及する

そのうえ、AIは手間がかかる自動車保険の保険金の支払い手続きでも活躍しています。スマートフォンのアプリで事故現場の写真を送信すると、保険金の支払額の見積もりが数分でできてしまうというのです。従来は1カ月程度かかっていた保険金の支払いが、1週間以内で完了できるまでになったといいます。

アメリカの大手の保険会社でも、新しく起業した保険会社の手法やベンチャー企業の技術を貪欲に取り入れて、できるかぎりすべての業務を簡素化して、コスト削減につなげる取り組みを進め始めています。これからの保険会社の経営目標は、店頭の窓口や保険の勧誘、対面の手続きなどをできるだけ省き、業務にかかる人件費を抑えることになってくるでしょう。

日本の保険会社では今のところ、AIの利用は単純な事務作業やコールセンター業務の一部にとどまっていますが、遅かれ早かれアメリカでの流れが日本にも波及し、AIやビッグデータ分析を駆使して業務を効率化し、保険料を下げていくという方向性が固まっていきそうです。保険料が下がる消費者にとっては好ましいことかもしれませんが、賃金が高い部類の雇用があまり必要なくなるという副作用は決して無視してはいけないでしょう。

中原 圭介 経営コンサルタント、経済アナリスト

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なかはら けいすけ / Keisuke Nakahara

経営・金融のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー・経済アナリストとして活動。「総合科学研究機構」の特任研究員も兼ねる。企業・金融機関への助言・提案を行う傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・経済教育の普及に努めている。経済や経営だけでなく、歴史や哲学、自然科学など、幅広い視点から経済や消費の動向を分析しており、その予測の正確さには定評がある。「もっとも予測が当たる経済アナリスト」として評価が高く、ファンも多い。
主な著書に『AI×人口減少』『これから日本で起こること』(ともに東洋経済新報社)、『日本の国難』『お金の神様』(ともに講談社)、『ビジネスで使える経済予測入門』『シェール革命後の世界勢力図』(ともにダイヤモンド社)などがある。東洋経済オンラインで『中原圭介の未来予想図』、マネー現代で『経済ニュースの正しい読み方』、ヤフーで『経済の視点から日本の将来を考える』を好評連載中。公式サイトはこちら

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