金融業におけるAIの積極的な活用は、窓口やコールセンターといった業務だけでなく、与信や融資に関する業務、振り込み確認、クレジットカードの不正検知など、多岐にわたって進んでいくことが確実な情勢にあります。
アリババグループはすでに既存の銀行を凌駕している
たとえば、金融業の中核業務である与信や融資においては、これまでは専門知識を持った金融マンがその金額によって数時間から数日以上かけて審査していましたが、AIがビッグデータを分析すれば1秒以内で判断することができるので、審査時間を極端というべきレベルまで短縮することが可能となります。金融業ではAIの導入が加速することによって、生産性(収益力)を大いに高めると同時に、大幅なコスト(人員)削減を進めることができるというわけです。
AIによる与信や融資で先行する、中国のIT大手アリババのグループ銀行では、個人商店の運転資金の融資はすべてスマートフォンで完結する仕組みとなっています。スマートフォンから融資の申請をするのに必要な時間は数分程度、AIが融資の審査や融資可能額を1秒もかけずに判断し、審査が通った場合は希望融資額が、アリババグループが持つ世界最大の電子決済サービス「アリペイ」の口座に数分で振り込まれるというのです。
アリペイは、中国の人々の90%超があらゆる消費に使っているスマートフォン経由の電子決済サービスの中で、最大シェアを誇ります。ここでAIが融資判断に用いているのはアリペイから得られる膨大な決済データです。膨大なビッグデータから100以上の予測モデルを解析し、資金回収の確率を民間銀行よりも大幅に引き上げることに成功しているのです。
日本の金融機関でも、AIが積極的に使われ、人員削減が進んでいくことになるでしょう。現に、みずほフィナンシャルグループは2024年度末までに500店舗のうち100店舗を削減し、2026年度末までに1万9000人の人員を削減すると発表しています。三菱UFJフィナンシャル・グループも2023年度末までに516店舗のうち最大100店舗を自動化し、6000人の人員を削減するといいます。三井住友フィナンシャルグループも、2019年度末までに全店舗の自動化を推進し、4000人分の業務量を削減するといいます。
しかし、これらメガバンク3行はAIの普及がもたらす雇用への悪影響を過小評価している節があり、現行の人員削減計画は甘いといわざるをえません。日本の金融機関は欧米の金融機関に比べて人件費などのコストが高く、生産性の改善が課題となっているといわれて久しいですが、これからはAIを搭載したコンピュータやロボットが生産性を大幅に引き上げるのと裏腹に、賃金が高い金融機関の雇用を破壊していくことが避けられないでしょう。
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