新日鉄住金、3000億円資産圧縮目標は今期達成 宗岡正二CEOインタビュー
[東京 1日 ロイター] - 新日鉄住金<5401.T>は、合併後3年で3000億円の資産を圧縮する目標を今期中に前倒しで達成する。宗岡正二会長兼最高経営責任者(CEO)がロイターなどとのインタビューで明らかにした。
今後の成長の柱となる海外戦略では、北米、インドネシア、インドで自動車向け鋼板の生産拡大を検討する。ただ、アジア鉄鋼市場の供給過剰は「10年続くことを覚悟」しており、海外高炉建設はあわてる必要はないとの見方も示した。
新日本製鉄と住友金属工業が合併し、新日鉄住金が誕生して1年が経過したが、安倍政権の経済対策による円安や内需回復で業績は着実に上向いており、宗岡会長は「想定以上の順調なスタート」と述べた。
3月に発表した中期経営計画では2015年度までに年率2000億円以上の統合効果を出し、売上高経常利益率(ROS)を12年度の1.8%から15年度に5─10%に引き上げる目標を掲げた。
宗岡会長は「目標は上方修正するのでなく、前倒しで達成したい」と表明。統合効果は前期実績の100億円に加え、今期は500億円を計画するが「もう少し上積みしたい」と指摘した。
在庫圧縮や株式売却などによる資産圧縮も、前期に1000億円、今上期に1200億円を実施済みで「できれば今下期中に残りを終えたい」と述べた。
そのうえで有利子負債自己資本比率(DEレシオ)を早期に1倍、さらに0.8%倍まで改善させるとの目標についても、前倒しで達成できるとの見通しを示した。財務体質の改善を続けることで、将来は増資による自前の資金調達も可能になるとの見通しも示した。
<輸出比率5割のビジネスモデルは持続可能>
アベノミクス効果で建設や自動車向けなど国内の鉄鋼需要が回復しているが、宗岡会長は年間6000万トン程度の国内需要が継続するとの見方を変えておらず、同社としても「国内の生産能力増強は考えていない。増やすのは海外」と語った。「2000億円の統合効果が出れば、多分、世界最高の鉄鋼メーカーになる。残された課題はグローバル展開」と述べた。
下工程では、すでに自動車用鋼板を中心に海外生産拠点を拡充しており、今期末には海外の鋼材生産高が年初の900万トンに比べ5割増の1400万トンになる。次のステップとしては、主要顧客である日系自動車メーカーが生産拡大を急ぐ北米、インドネシア、インドで下工程の生産体制を整えることが検討課題になるという。
一方、上工程については慎重な構えを示した。「ASEANで高炉を持ちたい」との意向に変わりはないとしながらも、中国鉄鋼メーカーの増産や韓国勢による高炉建設などで、「アジアの需給ギャップは10年程度は改善しないと覚悟し、生き残るためのコスト競争力や技術力を維持しなければいけない」とした。中国で製鉄所の統廃合が進み、需給が改善したり、好条件の売却案件が浮上した場合には検討する方針だが「あわてる必要はない」と冷静だ。
同社は国内で生産する鉄鋼の5割を輸出している。アベノミクス効果で超円高が是正され、輸出採算が大幅に改善したほか、自動車など顧客の業績も上向き、上期の大口顧客との鋼材交渉では値上げも勝ち取った。経営環境は1年前より「明らかに向上した」と話す宗岡会長。当面は輸出5割のビジネスモデルで「十分にやっていける」と自信を強めている。
<時価総額で世界鉄鋼トップ>
株式市場も同社の業績回復に注目している。株価はこの1年で2倍に上昇。時価総額は3.2兆円を突破し、粗鋼生産で世界最大のアルセロール・ミタル
同社の連結粗鋼生産(12年度実績)は約4600万トンで、9000万トンを超えるアルセロールミタルには遠く及ばない。宗岡会長は「商品の魅力や競争力なしに規模を追求しても何にもならない。規律なき規模の拡大は望まない」と述べ、顧客ニーズに応える商品やサービスを提供することで他社との差別化を図ると語った。
その結果として15年度までに収益力、技術力、研究開発力など「総合力で世界トップの鉄鋼メーカーになる」と強調した。2000億円の統合効果を実現した場合、売上高を5兆円とすれば4%の収益性向上につながるため、これまで収益力で負けていたポスコにも「キャッチアップし、我々が先頭に立てると確信している」と述べた。
新日鉄住金の14年3月期の連結経常利益予想は3000億円以上(前期実績は769億円)だが、トムソンロイターによるとアナリスト予想平均値は3616億円で市場は上振れを期待している。
(大林 優香 編集;田巻 一彦)
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