アップルが「米国内投資加速」を宣言した事情 トランプ政権との「歩み寄り」を象徴している

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アップルは米国のサプライヤーに投資すると発表(写真:アップル)

iPhone Xでは韓国サムスン電子製の有機ELディスプレーが採用されたが、調達とコストの問題から、2018年モデルでは、日本のジャパンディスプレイの液晶パネルで縁なしのデザインを実現するともうわさされるようになった。

さらに現在米国では、アップルがマイクロLED技術への投資を行っている。iPhoneなどの製品の組み立てを行う鴻海精密工業が、米国ウィスコンシン州に新たなディスプレー工場を建設することを明らかにしており、次世代のiPhoneに採用される可能性も指摘される。

アップルの米国製造業への投資は、日本や韓国など、アジアのサプライヤーにどのような影響を与えるだろうか。まず真っ先に影響を受けるのは、ディスプレーだろう。

トランプ政権とシリコンバレー企業との強固な関係

アップルのリパトリ減税に呼応する海外滞留資金活用のニュースが流れて以降、ドル円相場は急速に円高ドル安に振れている。

トランプ政権のドル安容認発言も後押ししているが、これから米国外から資金を移そうとしている米国企業にとっては、ドル安が有利に働く局面だ。

リパトリ減税が実現した場合、企業が米国外の子会社に寝かせたままになっている資金が米国に環流することになる。そのため、「ドル買い(ドル高)」に動くとの見方もあったが、そうはなっていない。あるいはマーケットがドル買いに走ることを見越して、あえて容認発言によってドル安地合を作り出しているのかもしれない。

もし、そうならば、経済政策においてトランプ政権とシリコンバレー企業とのスクラムは強固と見ておいたほうがいいだろう。いうまでもなく、トランプ大統領は「政治家」ではなく、「実業家」なのである。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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