人のつながりを再生する、街のデザイナー 新世代リーダー 山崎亮 コミュニティデザイナー
住民がワークショップやさまざまな活動に参加することで新たなコミュティが生まれ、その力が島を活性化していく。
こうした離島や山村での仕事だけではなく、都市部からの相談もある。今年6月、大阪にオープンした「あべのハルカス近鉄本店タワー館」では、近鉄百貨店と組み、百貨店内で様々な市民活動を行う「縁活」というプロジェクトを進めている。いわば商業施設の活性化だ。
「僕らは市町村に入っていって、まちづくりとか地域を元気にすることがコミュニティデザインだと思っていたが、デパート、病院などからも相談されるようになった。みなさんが本を読んだりしてコミュニティデザインを理解し、誘ってくれる。いろんなものが僕らの仕事になることに気づかされた」と山崎さん。
コミュニティデザインの力でどこまで問題を解決できるのか。新しい分野での仕事は、その挑戦でもある。相談にはできるかぎり応えたい。
ただ、山崎さんが代表を務めるstudio-Lのスタッフは25人。できる範囲には限りがある。「僕らが今までやってきたことは、ほかの人にもできるかもしれない。われわれのやり方がヒントになるなら、誰かが同じようなことをやってくれればいい」
阪神大震災で見た”災害ユートピア”と、その消滅
この仕事を始めたきっかけは、1995年の阪神淡路大震災だった。大阪の大学でランドスケープデザインを学んでいた山崎さんは、建物の被害状況を調査するボランティアに召集された。
がれきと化した街で、人々は助け合い、励まし合い、みんなで協力して今後のことを考えていた。しかし何年かたつと、その“災害ユートピア”は影をひそめた。人のつながりは希薄になり、孤立死が目立つようになった。全国に目を向けても、自殺者が3万人を超えて急増していた。
「人とのつながりを持続的に担保することはできないものか。ただ漠然とつながろうとしても難しい。信頼できる関係を築くには、一緒に何かに取り組むことだと思った」
では、何に取り組むか。企業活動もいいが、もっと“ゆるい”つながりがいいと考えた。職場や家族の人間関係は、「ストロングタイズ」といわれる強い結び付きである。簡単には切れない。それに対して、趣味の団体やボランティア活動は「ウイークタイズ」という、緩やかな結び付き。いつ切れてもおかしくない。
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