そもそも論ですが、これまでの重厚長大産業では、もう中国あたりとは競争できないことはわかりきっているわけですから、「新しい産業を興す」くらいの気構えが必要なわけです。もし、商工会議所の役割があるとすれば正にそういうことであって、いまだにありきたりの大企業を地方に誘致したり、既得権益を強化している場合ではありません。
高度成長時代の成功体験を持った既得権者は去れ
その意味では、これまでの高度成長の体験のある人は、その組織を去ったほうがいい。今や全く違う時代に直面しているわけですから、当時の成功体験は邪魔にこそなれ、何の役にも立ちません。
さらに言うと、これに関してはメディアの責任も非常に大きい。これはどこかの都市に限った話ではありませんが、例えば「地域おこし協力隊」などと銘を打って、地域外から来る人に交付金(われわれの税金)を支給し、地方創生の切り札になる起業家…などといって、メディアがクローズアップするのは、実に質が悪いわけです。
「まあ、交付金といっても月20万円くらいのことなので、目くじらを立てるほどのことではないよ」という方もいます。しかし、われわれからすると、「たった月20万円すら自分で稼げずに、交付金目当てに地方に来る奴の一体どこが起業家なのか?」という話であって、それは起業家になりたいが、東京ではハードルがクリアできないので、交付金がもらえる「非常勤地方公務員」になって地方にやってきている、というべき人たちで、これが地方における起業家ではあり得ません。
私の仕事の中心の一つである岩手県の紫波町で見ているとよくわかるのですが、メディアの取材側の人たちは、例外なく県庁所在地の盛岡(しかも相当いいところ)に住んでおり、岩手県に縁もゆかりもない、東京の大学を出た人が駐在員として2〜3年任期でやってきて人事が回っていくという現実があります。
おのずから彼らの取材源は役所が中心になるわけで、岩手県庁であるとか、盛岡市役所などが「これ記事にしてくださいよ」、というものが彼らの誌面(やネット)記事の中心になりがち、という現実があります。ですから役所の紹介のままに「地方の起業家」などと称して記事にすることになるわけですね。実際、紫波町のオガールもたくさん取材してもらいましたが、オガールを直接「発掘」されたのは北海道新聞くらいで、あとはほとんど全部が役所の紹介で、それまではオガールのオの字も知らなかった記者ばかりが取材に来ていました。
そもそも、本当の起業家(交付金などもらわないで自ら起業した人)は地方にはたくさんいるのです。福岡市にはそれこそいくらでもいて、明太子のやまやなどを筆頭に、まさに地方における起業の在り方のお手本になるような企業はいくらでもあるわけで、メディアはそういう企業こそ表に出して、地方創生のモデルにしてもらいたいもんだ、と思います。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら