「ラストアイドル」が一気に話題になった理由

秋元康プロデュースグループの最新進化

ラストアイドルは数回のメンバー入れ替えを経て12月20日にシングルCD「バンドワゴン」でデビューしたが、なぜこのようなシステムとなったのか。それはただ可愛くて歌と踊りのうまいアイドルが求められていない、あるいはそうしたアイドルは少なくとも爆発的に売れないことがハッキリしているからだ。

AKB48の人気が出始めたころは韓流ブーム真っ盛りで、「KARAのほうが可愛いしスタイルも良いし歌もうまいし、なんでAKB48のほうが人気があるのか?」という比較も散々聞かれた。

当時その説明に使われたのが「コンテクスト(文脈)」という表現だ。

AKB48のメンバーを初めて見た人にとっては、誰が誰だか見分けもつかずそれぞれのメンバーが飛びぬけたスキルを持っているわけでもない。一方でKARAは韓国の芸能界の手法として、デビュー前から徹底的なレッスンを受けレベルの高いパフォーマンスを披露する。つまり誰が見てもわかりやすい。

しかし、一度AKB48のファンになった人はメンバーの一人ひとりが異なる背景を持ち、異なるストーリーを抱えていること、つまりコンテクストを理解する。それは日々変化し自らの応援で握手会の人気や総選挙の順位に関与できる。文脈を理解することでファンはそのストーリーに参加し、応援するアイドルは歴史を積み重ねていく。こうしてごく普通の女の子が(ファンにとっては)目が離せない存在となっていく。

ラストアイドルはその歴史の積み重ね、つまりファンが応援するべき文脈・ストーリー作りを短期間で行うシステムだったといえる。

デビュー曲のバンドワゴンもまた、夢を追いかけて過酷なオーディションを勝ち抜きアイドルになるというストーリーを、ドラマチックに盛り上げる役割を担う。ファンが楽曲に共感する時、それはラストアイドルに共感することとイコールだ。そしてラストアイドルはこの楽曲を身に纏う事で生身の人間でありながらコンテンツとなる。この手法もまた秋元プロデュースのビジネスモデルであり、徹底してアイドルの存在をコンテンツ化させる。

思い付きから生れたラストアイドルファミリー

過酷な入れ替え戦で感情をむき出しにして戦う様子はファンの心をつかんだ。そこに秋元マジックが更に加わる。負けた挑戦者と、負けた暫定メンバーで別のグループ、つまりセカンドユニットを作ることが番組開始後に発表された。これはかつてのオーディションバラエティ・ASAYANで落選組によって結成された「モーニング娘。」を彷彿とさせる。

本来であれば「負けたら終わり」という緊張感をなくすことは番組にとってマイナスに見える。ただ、メディアのインタビュー記事などによれば、秋元氏はプロ同士の戦いを想定していたはずが、夢を持った少女がまるで血を流して殴り合うような状況をテレビで放送するのはさすがに残酷すぎる、アイドルを目指すことが夢を持てないように見えるのはよくないと、急遽初回の収録を見てセカンドユニットの結成を思いたったという。

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