「ラストアイドル」が一気に話題になった理由 秋元康プロデュースグループの最新進化

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2017年8月に始まったオーディション番組「ラストアイドル」は、このようなAKBシステムをさらに進化・激化させた。この番組は秋元氏のプロデュースで「究極のアイドル」を作ることを目的に始まった。番組開始にあたって約5000人の応募者からオーディションで選ばれたのは、後に番組と同名のアイドル「ラストアイドル」としてデビューする「暫定メンバー」だ。

7人の暫定メンバーは毎週の放送で、同じくラストアイドルとしてデビューしたい挑戦者と1対1のオーディションバトルに臨む。審査の結果、挑戦者が勝てば暫定メンバーと入れ替わる。つまり暫定メンバーは防衛する立場であり、勝った挑戦者もまた次回の放送から同じく防衛する立場となる。そして最終的に勝ち残ったメンバーがデビューする。

審査員は話し合いではなく毎回1人が指名され、たった1人のジャッジで結果が決まる。この手法は話し合いで尖ったアイドルは生まれないという秋元氏のアイデアだという。

荒れるファンと混乱する暫定メンバー

なんとも無茶なシステムだが、当然のごとく番組は毎回のように荒れた。暫定メンバーとはいえ放送を重ねればそれぞれにファンも付く。審査結果に納得のいかないファンは審査員を批判することでたびたび炎上騒動も起きていた。メンバーもまた入れ替わりがあるたびに動揺を繰り返す。

筆者が初めてラストアイドルの姿を見た時は、なんだかサイズの合わない衣装を着ているなあ……と変なところが気になってしまったが、その理由は後になってわかった。衣装は7人分しかなく、入れ替えによってどんな体型の人が着るかわからないため暫定メンバーの体型に合わせて作っていないことが理由だという。

もともと在籍していたメンバーから見れば、入れ替わった挑戦者は暫定とはいえ仲間を倒して入ってくる異物だ。番組では放送開始時点ですでに完成していたデビュー曲「バンドワゴン」を毎回披露するが、入れ替えがあった場合は30分前に挑戦者だった人がすぐに暫定メンバーとしてデビュー曲を披露する(入れ替わりに備えて挑戦者には事前に曲のフリなどをある程度練習させているという)。

番組収録は一度に複数回分を行う都合からこのような流れになるわけだが、ついさっきまでの仲間が立ち去って挑戦者が加入する状況に、メンバーは強く戸惑う。番組が回を重ね、センターとしてグループの顔を務めていた暫定メンバーが番狂わせで負けた時には、過去に挑戦者として入れ替わったメンバーまで「現実……?」と混乱を口にする。別の暫定メンバーは勝った挑戦者に「がんばりましょう。気まずいけど……」とやっとの思いで声をかける。

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