回転寿司、「日商100万円」の尋常ならざる世界 4社でシェア75%、寡占化の中で進む同質化

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各チェーンとも中小型店を残しているので、上記のフォーマットに単純に当てはめてはいけませんが、日商を平均すると、スシローは約100万円、くら寿司は約80万円程度です。スシローは原価率を「おおむね50%」とうたっています。

この原価率の高さが、かっぱ寿司など他の中小チェーンを引き離した要因です。高い原価率を維持して営業利益を確保するには人件費率を下げる必要があり、他の業種と比較して高い売上高が求められます。郊外のレストランで日商80万~100万円というのは尋常な数字ではありません。

サイドメニュー拡充は諸刃の剣

過去にさかのぼると1970~80年代は「ファミリーレストラン(FR)御三家」の全盛時代。すかいらーく、ロイヤルホスト、デニーズの3チェーンが週末は車に乗って家族で食事に行く新しいライフスタイルを提供。ステーキ、ハンバーグ、エビフライ、デザートにコーヒー。家族にとってはハレの食事でした。指標は100坪、100席、客単価1000円、1日3回転、日商30万円。郊外レストラン「無店時代」の指標であり、ファミレスに勢いのあった時代。それでも日商は30万円程度でした。

90年代に入り、バブル崩壊と過当競争を勝ち抜くために、すかいらーくが低価格業態「ガスト」にシフト。しかし、客単価減を客数で補えず、オペレーションが荒廃していきました。ここから混迷期に突入したのは周知の通りです。

その一方で、人口減、少子高齢化、単身世帯の増加といった今のこの時代に、回転寿司業態はさらなる成長戦略を描きます。くら寿司の直近4年の店舗数は「331→344→365→385店舗(16年10月期)」、スシローは16年に再上場を果たし、毎年30~40店舗の出店を中期計画に記しています(17年9月末で466店舗)。

著者はスシローが新規出店した地域を取材した経験があります。前述した寡占化の数字が示す通り、地場の回転寿司店を “なぎ倒していく” 状況でした。1店舗で年間3億円強の売上げを持っていくわけですから、その周辺の中小回転寿司店には大きな影響を与えます。

中小店からシェアを奪いながら、デザートや揚げ物や麺類といったサイドメニューを増やすことで、他の業種からもお客を奪っている状況です。

サイドメニューの拡充は諸刃の剣と言われています。客層や利用動機を広げる効果はありますが、主軸の「寿司」が疎かにになり、専門性も薄れて、客離れを招く負のスパイラルに入ります。各チェーンとも危険な兆候が見てとれます。

もう1つの危険な兆候。スシローは先の中期計画の中で「都心型店舗、小規模商圏対応の店舗を展開することで、従来と異なる利用動機・顧客層を取り込み、 更なる売上機会の追求も図って参ります」と記しています。

都心型店舗は物件に左右されるため店舗フォーマットや出店基準がイレギュラーになりがちです。15年から都心部で出店を開始した“回らない寿司店”は、数店舗を展開しましたが、16年に全て撤退しました。自社のメイン業態よりも客単価の高い業態開発はおおむね失敗する教訓通りになりました(ロイヤルホストが90年代にカジュアルイタリアンを立ち上げて失敗など)。

そこで、スシローは本業である「回る寿司」を16年に池袋、17年に五反田へ出店しました。都心への再攻略です。

しかしながら、スシローの売上げのほとんどは郊外店にあります。

果たして、先細りが見える郊外において、客単価1000円、年商3億円の “巨艦フォーマット”を出店し続けられるのか?

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