壇蜜「仕事に楽しさ求めない」と言い切る理由 "自分らしく"という幻想に押し潰されないで
「政美は周囲の人に守られ、支えられながら成長していく。その姿に自分の過去が重なり、私も『孤独から立ち直っている最中なのかもしれない』と思いました」
そう壇蜜さんはつぶやいた。
意味深な言葉だが、その真意はどこにあるのだろう。
「私は、この世界に入るまで派遣社員として働いていました。当時は何の社会的な保障もなく、正社員のように目標を共にする仲間もいない。とにかく孤独な毎日です。そうすると、自然と『チームって何だろう?』『仲間と働くってどんな感じだろう?』と考える時間が増えますよね。そんな疑問を抱えたまま、私は芸能界に足を踏み入れました。
今はチームでモノづくりをするのが当然という環境です。一人ぼっちで不安だった派遣時代とはまるで違う。まだ自分にとって『仲間とは何か』という答えは出ていませんが、今、その答えが出かかっているところ。いつか振り返ったときに、仲間がいて良かったと思えるような経験をこれからの仕事でも重ねていければ」
“働く=自分が輝く”と強く望みすぎるからつらくなる
ブレイクから歳月を経た今も、テレビに出れば“セクシー担当”としての受け答えを要求される場面が多い壇蜜さん。しかし、そうしたイメージに縛られて、窮屈さを感じることはないのだろうか。そう尋ねると、いつもの壇蜜スマイルを浮かべて、こんな話をしてくれた。
「結局、“自分らしさ”なんてものは他人がつくるものです。どれだけ上司や先輩が『自分らしくやっていいよ』と何か仕事を任せてくれたとしても、それは上司や先輩の思う“自分らしさ”を見せてください、ということ。少なくとも仕事の本質は“誰かのためになるかどうか”ですから、自分の思い通りにのびのびできることなんてあり得ないと私は考えています」
そうきっぱりと断言した。
「私も含めて皆、他人に何かしら期待し、イメージを抱いている。それは仕方のないことです。そのイメージから解放されようというのは、少なくとも仕事では無理。だから、それを重圧に感じるのではなく、何を期待されているのかを読み取って応えていく方が、仕事は上手くいくと思います」
芸能界という移り変わりの激しい世界を、独自のスタンスでサバイブしてきた壇蜜さんらしい言葉だ。だが、器用に立ち振る舞うほどに、どこかで自分がすり減るような虚しさを感じてしまうこともある。
「これは私の持論ですが、そもそも働くことに楽しさを求めない方がいいと思います。“働く=自分が輝く”と強く望み過ぎてしまうからつらくなるんです。男性がいて、女性がいて、会社という組織がある。その中で自分の個性ややりたいことを見出していくことって、本当に難しい。なのに、皆が何とか『輝き』を見つけ出そうとするから、無理して体まで壊してしまうのではないでしょうか」