仕事のやり直しが多い人は「トヨタ式」に学べ 始める前の準備に時間と手間をかけよう

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(1)設計に入る前のヒアリングが不十分なため顧客の希望が設計部門にしっかり伝わっていない

(2)話を聞く相手が奥さん中心で夫や子どもたちの意見をほとんど聞いていない

(3)設計部門のつくる図面が専門的すぎてその中身を顧客が十分に理解できていない

(4)営業マンと設計部門のコミュニケーションが不足しており意志の疎通ができていない

(5)建築部門が着工を急がせるため顧客へのヒアリングも設計も納得いくまで時間をかける余裕がない

A社の設計部門や建築部門には顧客の考えがふらふらしてはっきりしないために何度もやり直しをすることになるという不満がありました。「営業マンが『こうしましょう』と引っ張ればいいんだ」と営業マンを責める意見もありましたが、個々の事情を丁寧に調べていくと、A社の側に顧客の考えを汲み取る姿勢が欠けていることがはっきりしました。

顧客は建築のプロではありませんが、「こうしたい」というたくさんの夢や希望があります。それをいかに正確に汲み取り、「見える化」して設計に反映するかはまさにプロであるA社の役割でした。

時間をかけたヒアリングと思いの見える化

A社はすぐにいくつかの改善策を実行しました。

(1)ヒアリングは家族全員がそろう曜日や時間を中心に行う。全員にアンケートを記入してもらい、個別に家への希望を話してもらう

(2)ヒアリングをベースに営業マンがイラスト風の設計図を作成、それを見ながら再度家族みんなの考えを聞く

(3)家族みんなの考えがある程度まとまった時点で設計部門に設計を依頼するが、同時に誰が見てもわかるイラストも作成してもらう

(4)営業マンが設計部門の人間を交えて家族としっかり話し合って最終的な設計図を決定する

大きく変わったのは家族全員の意見をしっかり聞くことと、そこで聞いた要望を誰にでもわかりやすいイラスト風の図面に落とし込むことでした。

トヨタ式に「思いの見える化」という言い方があります。

自分の考えを誰かに伝えるとき、言葉だけでは伝わらないものもイラストや模型など目に見えるようにすることで格段に伝わりやすくなります。相手の意見も積極的に出るようになり、建設的な意見交換が可能になってきます。

同様に家に関しても家族みんなの意見をしっかり聞いたうえで、「それを反映するとこんな家になりますよ」というイラストなどがあれば、誰もが見てわかりますし、見ることで「ここはもっとこうしたほうがいいよ」「これはやめたほうがいいな」という意見も出やすくなるのです。

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