「金の食パン」で起きたパラダイムシフト 発売4カ月で1500万個。大ヒットがもたらした業界の変化
だが、セブン-イレブンの中村氏は「メーカーは、消費者が安いものを求めていると誤認している」と指摘する。専門店などでは、1斤300~400円でもヒットしている食パンがあるからだ。「顧客の満足度を考えるならば、(低価格ではなく)上質の方をやってみよう」という考えから、商品開発が始まった。
松・竹・梅で「松」にあたる食パンがなかった
高級路線の狙いはそれだけではない。国内のパンの生産数量(パン用小麦粉使用量)を見ると、食パンの生産数量は菓子パンの約1.5倍ある(12年。一般社団法人日本パン工業会)。ところが、セブン-イレブンでは菓子パンや総菜パンの販売が大半を占め、食パンの品揃えが手薄だった。
比較的安価な「セブンプレミアム」の食パン、敷島製パンの「超熟」など中価格帯食パンは取りそろえていたが、「松・竹・梅でいえば、松にあたる食パンがなかった」(中村氏)。食卓での需要の大きなカテゴリーで品ぞろえを増強し、「セブン-イレブンが食卓に入り込む」(同)ために、「松」の食パンが生み出された。
その狙いは見事に的中し、セブン-イレブンでの食パンの売上高は前年比6割増と飛躍的に伸びた。直近の食パン売上高のうち、4割超が「金の食パン」で占める。また、「金の食パン」の購入者のうち、約半数はそれまでセブン-イレブンで食パンを購入したことがなかった新しい顧客だという。そうした中、パン最大手の山崎製パンから「ユアクイーンゴールド」が発売された。
「メーカーさんがPBを真似される時代に入ってきた」。鎌田氏はセブンプレミアムやセブンゴールドといった高付加価品の展開に確かな手ごたえを感じている。これまで小売りのPBといえば、メーカーのナショナルブランドを目安にして作られるのが通例だった。「(セブンプレミアムを発売した)07年当時は、例えば日清カップヌードルをベンチマークにして(PBのカップラーメンを)作っていた」(鎌田氏)という 。
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