世田谷一家殺人事件、被害者の姉の「その後」 隣に住んでいた姉一家の人生も激変した

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時刻は10時を回っていた。待ちきれないように腰を上げたのは、母親だった。泰子さんとおせち料理を作ることになっていたため、「起こしてくる」と隣家に向かった。両家は、二世帯住宅といっても、玄関が別々だった。

「だから、母が第一発見者になってしまったんです

「家じゅうが荒らされていた」

2000年12月31日、事件発覚後、自宅周辺は非常線が張られ、ブルーシートで覆われた。入江さん一家は、捜査協力をしながら事件後も隣家の自宅で1か月を過ごした

10分もしないうちに、血相を変えて戻ってきた母親は、震える声で叫んだ。

「隣が、泰子たちが、殺されちゃってるみたい──」

ただならぬ様子に、入江さん一家は、隣家に急いだ。

「殺されたって、まさか──」

半信半疑で玄関に入った瞬間、全身が凍りついた。目に飛び込んできたのは、異様な光景だった。

「衣類や書類が散乱し、家じゅうが荒らされていました」

山積みの衣類の下から、みきおさんのものと思える白い足が見えた。弾かれたように中に入ろうとする入江さんを、夫が鋭い声で止めた。

「見るな! 触るな! 戻るんだ!」

悪夢の始まりだった。

「妹一家が殺されたと知ったのは、警察の事情聴取を受けているときでした。このとき、母の頬に血がついていることに気づいて。第一発見者の母は、たったひとりで家中を回り、4人の亡骸を抱きあげていたんだと胸が詰まりました」

犯行時間は30日午後11時から翌日の未明にかけて。犯人は宮澤さん一家を殺害後、現場に長時間とどまり、現金を強奪して逃亡した。

現場には、犯人の指紋、衣類、血液など、多数の証拠が残され、逮捕は時間の問題だと思われた。

だが、予想に反して、捜査は難航した。

「どんな小さな情報でも、思い出してください」

警察は殺気立ち、入江さん一家は、朝から晩まで、人を疑う作業を続けた。

「それこそ、寝食を忘れて、捜査に協力しました。絶対に、犯人を逮捕する。怒りに突き動かされるように」

葬儀の席では、同情の声が上がる一方、「家の前を通るのも恐ろしい」「犯人と違う血液型でよかったわね」だのと、心ない言葉を浴びた。

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