アーバンパークライン「改称」は定着したのか 鉄道路線の愛称、浸透しないケースも

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路線検索では対応が分かれている。「宇都宮線」「東武スカイツリーライン」はYahoo!とGoogleの双方が使用する一方、「東武アーバンパークライン」については、Yahoo!は使用しているものの、Googleは正式名の東武野田線を用いている。

一方、開業時から『鉄道要覧』に掲載された鉄道許可申請時の路線名でなく、愛称を使用している路線では異なる傾向が見られる。「つくばエクスプレス」は、『鉄道要覧』に掲載された路線名は「常磐新線」であるものの、開業時から案内表示ではこの名称ではなく愛称を使用している。マスコミの報道などでも、常磐新線が用いられることは少ない。不動産検索サイト5社も「つくばエクスプレス」を採用しており、高い定着度を示している。

愛称名ではなく正式に路線名を変更した場合も同様である。その事例のひとつとして、東京急行電鉄田園都市線の渋谷駅―二子玉川駅間がある。同区間は従来から田園都市線の中央林間駅―二子玉川駅間と一体で運行していたが、2000年8月までは新玉川線が正式路線名だった。

沿線自治体の世田谷区道路・交通政策部交通政策課は「田園都市線への改称後、『新玉川線』を用いたことはない」という。不動産検索サイト5社でも、旧称の新玉川線の使用はゼロである。正式名の変更後は、旧路線名の使用はなくなると判断してよさそうだ。

「分かりやすさ」を忘れないで

これまで見てきた通り、当初から使用されている場合は高い定着度を示す愛称名だが、長年使用されてきた正式名に代えて導入された場合は、JR宇都宮線のように定着しているケースがある一方、必ずしも浸透していない現状がある。

正式名を変更すれば定着するであろうが、それにはコストがかかることも事実だ。「JR京都線・琵琶湖線」といった愛称を約30年前から導入しているJR西日本などが路線名を変更せず、愛称にとどめているのは、発券システムの改修などに多額の費用がかかることも要因のひとつだと推測される。

鉄道事業者にとって路線名は重要な「商品名」であり、鉄道事業者や沿線自治体のブランド戦略の一環として愛称の導入が検討・要望されることは理解できる。鉄道路線を運営するのは鉄道事業者であり、愛称導入は鉄道事業者の専権事項である。一方で、沿線利用者らには波紋を投げ掛けることもあり、沿線自治体や利用者などへの丁寧な説明は不可欠だ。旅客にとって分かりやすい案内を優先する視点を忘れないでいただきたいものである。

大塚 良治 江戸川大学准教授

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おおつか りょうじ / Ryouji Ohtsuka

1974年生まれ。博士(経営学)。総合旅行業務取扱管理者試験、運行管理者試験(旅客)(貨物)、インバウンド実務主任者認定試験合格。広島国際大学講師等を経て現職。明治大学兼任講師、および東京成徳大学非常勤講師を兼務。特定非営利活動法人四日市の交通と街づくりを考える会創設メンバーとして、近鉄(現・四日市あすなろう鉄道)内部・ 八王子線の存続案の策定と行政への意見書提出を経験し、現在は専務理事。著書に『「通勤ライナー」 はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』(東京堂出版)。

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