アーバンパークライン「改称」は定着したのか 鉄道路線の愛称、浸透しないケースも

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路線の愛称名は、大きく2つに分類することができる。1つは複数の路線にまたがる運行系統に対する通称(東海道本線・東北本線を直通する「京浜東北線」や山手線・赤羽線・東北本線を直通する「埼京線」など)、もう1つは正式名に代わる新たな路線名として制定された通称である。

「宇都宮線」は東北本線上野―黒磯間の愛称だ(写真:ニングル / PIXTA)

後者はさらに、沿線自治体からの要望によって制定された通称(東北本線の「宇都宮線」や東海道本線・北陸本線の「琵琶湖線」など)、都市部の路線のイメージアップやわかりやすさを狙って制定された通称(東武野田線の「東武アーバンパークライン」や東海道本線の「JR京都線」など)と、地方部の路線の知名度向上や活性化を狙って制定された通称(予土線の「しまんとグリーンライン」や根室本線の「花咲線」など)に分けることができる。

「JR京都線」などの愛称制定の理由について、西日本旅客鉄道(JR西日本)広報部は「地域の皆様により身近で親しみを感じていただけるように、それぞれ愛称をつけている。『JR神戸線』など他路線の愛称とともに1988年3月13日から使用を開始した」と説明する。

このように多様な事情によって制定される路線愛称名であるが、社会の中で浸透しているかどうかはまた別である。

使用実態を調べてみると

愛称名の浸透度を判断する目安としては、たとえばマスコミで用いられる路線名や、沿線自治体のホームページで使用される路線名、不動産会社の検索サイトの路線名、ネットの路線検索などを挙げることができる。

そこで筆者は、JR東日本の「宇都宮線」と東武鉄道の「東武スカイツリーライン」および「東武アーバンパークライン」の沿線自治体のホームページで、正式名と愛称名のどちらが使用されているのかを調べた。

まず、「宇都宮線」は高い浸透度を示した。東北本線東京駅―黒磯駅間の沿線自治体25のうち、16の自治体が愛称のみを使用するか、または優先的に用いている。国土交通省混雑率データ(2016年度)と、NHKと在京テレビキー局(日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京)および新聞大手5社(日経、読売、朝日、毎日、産経)も「宇都宮線」の呼称を使用していた。

「宇都宮線」は、当時の栃木県知事が茨城県知事・埼玉県知事・東京都知事の了解を得てJR東日本に働きかけ、1990年3月10日から東北本線上野駅―黒磯駅間で制定された通称である。行政が主導した通称であることが、行政やマスコミの積極採用に繋がっている要因のひとつと推測される。

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