ロシアは大胆な軍事行動を起こしかねない 政府内で軍の発言力が高まっている
外交政策決定が以前より敵対的かつ不透明になっていることから、ロシアが新たに大胆な軍事行動を起こす可能性が高まっている、と一部の西側当局者は警鐘を鳴らす。
「外交政策について、これまでより大きな発言権を国防省に与えると、トラブルの種を探すようになる」と、ある当局者は、問題の微妙さゆえに匿名を条件としてと語った。
ショイグ国防相の派手な活動により、3月の選挙で4期目をめざすプーチン大統領が突然辞任せざるを得なくなり、6年間の任期を務めることができない場合、長年忠実な部下であったショイグ氏が代理を務めることになるのではないかとの噂が再燃している。
62歳のショイグ氏は政党政治には関与していないが、世論調査では、大統領候補の人気ランキングでトップ5に入ることが多い。信頼度ではプーチン大統領に次ぐ2位につけることも多く、この夏にはプーチン氏と旅行先で釣りを楽しむ様子が撮影されている。
シリアでの役割
ロシア、そしてその前身であるソビエト連邦での軍の影響力には、浮き沈みが見られる。
大きな影響力を持っていたのは第2次世界大戦終戦時、そして1950年代に旧ソ連の指導者スターリンが死亡した後である。このときはナチスドイツの打倒に重要な役割を果たしたと評価されるゲオルギー・ジューコフ元帥が国防相の座にあった。
だが、1989年に完了したアフガニスタンからの不名誉な撤退、ソ連崩壊後の2度にわたるチェチェン紛争、2000年に乗員118人全員が死亡した原子力潜水艦クルスクの沈没事故によって、軍の名声は地に墜ちた。
旧ソ連の国家保安委員会(KGB)諜報員だったプーチン氏が、軍の最高指揮官でもある大統領に就任すると、軍の株は上昇した。国防費は増大し、軍はジョージア、ウクライナ、シリアに派遣され、その活動は愛国心高揚のために利用された。
政治・外交政策における軍の影響力増大が最も顕著に現れているのが、シリアだ。
ジョイグ国防相は今年すでに2度ダマスカスを訪れてアサド大統領と会談しており、今月再び、同大統領と会談したプーチン氏に随行した。一方、ラブロフ外相は今年に入り一度もシリアを訪れていない。
国防相としては異例のことだが、ショイグ氏はシリア和平のための外交努力にかかわっている。この役割のなかで、ショイグ氏はシリアにとっての新憲法制定の重要性を語り、シリア問題に関する国連特使と会談し、イスラエルのネタニヤフ首相、カタールのタミム首長と協議している。