「儲かる道の駅」と「赤字の道の駅」にある差 「道の駅成功請負人」中澤さかな氏の持論
たとえば、2017年4 月に熊本県葦北郡芦北町で開業した直売所兼レストラン「芦北うたせ直売食堂『えび庵』」。中澤氏は熊本県芦北地域振興局からの依頼を受け、開業の2年半前からアドバイザーとして関わってきた。芦北町は八代海に面する人口約1万7000人の町。この食堂があるのは主要道から細い地方道を約3km海に向かった岬で、商業施設の立地としてはかなり厳しい条件だった。
中澤氏が目をつけたのは同地で捕れる天然エビだ。芦北町計石は古式伝統漁法「うたせ網漁」が残る地域。この漁法によって水揚げされる天然アシアカエビ、天然イシエビを主力メニューに設定し、天然エビ専門店として開業することにした。消費者が日常的に食べている天丼やエビフライで使われているのは、ほとんどが東南アジアや南米産の養殖バナメイ種か養殖ブラックタイガー種。国産地物天然エビを使用した天丼やエビフライ重、えびめしは大きな競争力を持つと判断したのである。
「甘いことを言っていられる状況ではない」
地物天然エビに特化したことでメディアにも注目され、休日には行列ができるように。開業後半年の月間利用者数は1500人、月間売上高は250万円と目標を大きく上回る数字を達成した。
しかし、同地では当然のことながらエビ以外の魚介類も水揚げされる。エビに一点集中することに対して、行政や地元から反発はなかったのだろうか。
「行政に関しては、この10年の間に『機会均等・公平性ばかり気にしていたら成果は挙がらない。可能性があるものに資本を傾斜配分する』という考え方がだいぶ浸透したように思います。それだけ甘いことを言っていられる状況ではなくなった、と言えるかもしれません。
地元住民は基本的にどの地域でも“あれもやりたい、これもやりたい”となるものです。でも、そうすると何もものにならない。“あれもこれも”ではなく“あれかこれか”を決めてパワーを投下すべきであることをきちんと説明し、納得してもらうことが必要です。えび庵を運営するお母さんたちも最初は『ほかの魚種をもっと使いたい』と言っていましたが、現在では考案してくれる新メニューの内容はエビばかりになりました」(中澤氏)
また、現在は沖縄県うるま市石川で、2018年に開業を予定する大規模直売施設のキラーコンテンツづくりを依頼され、県内初の「島魚の干物」の開発・販売に取り組んでいる。全体的に淡白で脂身が少ない沖縄の魚。しかし、干物にすることで水分が除去されて旨み成分が熟成・凝縮されるのだ。
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