「儲かる道の駅」と「赤字の道の駅」にある差 「道の駅成功請負人」中澤さかな氏の持論
力を入れたのは独自商品の開発だ。たとえば、「萩の金太郎」。萩市では年間60〜80tほど水揚げされ、普段使いの総菜魚として親しまれてきた金太郎。ほかではあまり見かけないこの朱色の小魚に目をつけた中澤氏がさまざまな文献資料をあたったところ、フランス料理に使われる高級魚「ルージェ」の近縁種であることが判明した。試行錯誤の末、オイルサーディンの金太郎バージョン「オイル・ルージュ」を開発した。
金太郎の鮮やかな色味と旨味を生かしたオイルルージュは人気商品となり、県外からも客が買いに来るように。近隣飲食店でも金太郎が扱われはじめ、当時キログラム当たり200円台だった魚価は、現在では500〜600円台に上昇。雑魚から萩の名物へと大出世を遂げた。
このほか、鮮魚売り場で魚介類を選び、館内のレストランで調理法を指定する「勝手御膳」という仕組みを導入したり、毎週金曜日に当日水揚げした鮮魚をトロ箱単位で提供する格安販売会を行ったりと、ほかの道の駅やお魚センターにはない取り組みを実施。メディアに度々登場し、「地元住民が足繁く通う場所」という評判から、結果として観光客も集まるようになった。
道の駅の成否に立地は関係ない
萩しーまーとの経営手腕を買われた中澤氏は、10年ほど前から全国の市町村から道の駅や農水産物直売所の開設や水産資源開発のコンサルティングを請われるようになった。定期的に訪問する形で関わったプロジェクトは約50に上る。
中澤氏が初期にプロデュースした道の駅「みなとオアシス宇和島 きさいや広場」(愛媛県宇和島市)、「笠岡ベイファーム」(岡山県笠岡市)は、初年度で目標を大きく上回る売り上げと来場者数を達成。その後も勢いは衰えず現在も数字を伸ばしている。2014年には、東日本大震災後の風評被害により売り上げが半減した「日立おさかなセンター」(茨城県日立市)を道の駅としてリニューアル。全店舗の半分を入れ替え、新しい商品を入れることで再生した。
道の駅や直売所の開設にあたってまず行うのは、徹底的なエリアマーケティングと競争優位性の確保である。「不利な立地でもほかにはない取り組みを行えば人は来るし、差別化できる要素がないように思っても、探せば見つかるものです」と中澤氏は力強く話す。
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