日本を舞台に選んだイスラエル起業家の決意 サイバー特殊部隊出身者が2国の架け橋に

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高校を卒業以来、満を持して日本に戻ってきたのは2年前。真っ先に感じたのは「違和感」だったという。

「自分でビジネスに携わるようになってから訪れた日本には、幼い頃抱いていたあのある種のあこがれのような、偉大な技術立国としての存在感が薄れていました。いろいろな面で違和感を持ってしまったのが事実です。それは、僕がその後育ったイスラエルが急速に変化を遂げていたことも大きな理由かもしれません」(ヨアブ)

ヨアブが感じた日本への違和感とは、この国に住み慣れたわれわれ日本人からすると、ごく当たり前の日常かもしれない。たとえば、CDやDVDのレンタルショップ。今、世界ではストリーミングが主流だが、いまだに日本人がショップに足を運び、音楽や映画を「借りる」というスタイルを見ると、むしろ後発国において標準になっている最新のイノベーションに、日本のいわゆる「ハード」技術が取り残されていると感じることが多かったという。

また、いまだにファックスが官公庁や銀行などの場で使われていたり、海外旅行などの予約がインターネットではなく旅行代理店の窓口で行われていたりするケースも少なくないことなどが、久々に降り立った技術先進国のはずの日本で味わった「時代錯誤感」だと打ち明ける。

「大好きな日本をもちろん否定したくないのですが」と申し訳なさそうに前置きしたうえで、ヨアブはこう指摘する

「日本の発展は残念ながらある意味、停滞していたのです。その間、イスラエルは特定の分野でものすごい勢いで技術が発展してきました。インターネットが普及し、ソフトウエアの斬新な開発などで小国イスラエルが世界に名乗りを上げ始めたのです。自動車や家電などを『製造』できないと勝てない時代が終わり、ヒューマンリソースも少なく歴史が短い国でも、アイデア次第で大きなイノベーションを遂げ、世界で競争することができる時代が訪れたのです」(ヨアブ)

大好きな日本とイスラエルの架け橋に

しかし、「大好き」と断言してやまない日本の最新式トイレに始まり、より快適で便利な生活様式を実現させてきたハード面やテクノロジーなど、日本が圧倒的なモノづくりの技術を持っていることには、いまだに尊敬の念を抱くという。

今、ヨアブが考えているのは、こうした日本のモノづくりにおけるポテンシャルとイスラエルのイノベーションを掛け合わせて、化学反応を起こすような仕掛けだ。

ヨアブが中心となって日本で企画・開催された、初のジャパン・イスラエル・イノベーションサミット会場にはイスラエルに関心を持つ多くの企業関係者らが訪れた(筆者撮影)

その取り組みの第1弾として先月、イスラエルで活躍する著名な起業家や元8200部隊の司令官など、そうそうたるメンバー総勢12人に来日してもらい、日本で初めて「ジャパン・イスラエル・イノベーションサミット」を開催。イスラエルとのビジネス協業などを探る大手企業の投資部門担当者やスタートアップ関係者ら150人ほどが参加し、大盛況となった。

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