日本を舞台に選んだイスラエル起業家の決意 サイバー特殊部隊出身者が2国の架け橋に
イスラエル革新庁の最高経営責任者(CEO)であり、アップル現地法人のトップを務めたアーロン・アーロン氏も来日。イスラエルを「第2のシリコンバレー」として、軍や企業が連携した密接なネットワークが、イスラエルがイノベーションで大きな発展を遂げた理由だとアピールした。
ライドシェアサービスのスタートアップ、「ヴィア・トランスポーテーション」の共同創業者兼CEOであり、ヨアブの兄であるダニエル・ラモット氏も来日。「ヴィア」は、複数の乗客が同じ車両に座席を共有できる技術を開発し、メルセデスベンツが投資したことで世界でも大きく知られており、相乗りが条件だが価格の安さが売りのサービスは今、急速に広まりつつある。今、世界の最先端をゆくイノベーションの立役者たちのプレゼンテーションに、訪れた日本企業関係者らは熱心にメモを取りながら聞き入っていた。
ちなみに、ダニエル氏は(弟のヨアブが8200部隊出身であるのとは異なり)最先端の軍事技術開発を担うエリート集団である「タルピオット」出身者である。「タルピオット」とは、毎年義務教育を終了した学生のうち、理工系の秀でた頭脳や抜きん出たリーダーシップなどが認められたわずか30人程の精鋭。最先端の軍事技術やハードな実地訓練などのプログラムを終えた後は、その貴重な経験を生かして起業する例が後を絶たないという。
軍隊が起業家精神を育む源泉に
弟のヨアブが所属した「8200部隊」にしろ「タルピオット」にしろ、アラブ諸国に囲まれてつねに軍事的緊張にさらされているイスラエルにおいて、そうした兵役期間中の経験が、多くのイノベーションを生む起爆剤になっていることは確かだ。
ヨアブが8200部隊に入った時は、その事実は周囲にあまり公にはしなかったという。「ここ最近変わってきました。イスラエル政府も国として8200部隊やタルピオットの存在を、自国のサイバーセキュリティやイノベーションといった分野での強みをアピールする際のいいブランドリソースとして使うようになってきたのです」(ヨアブ)。
確かに、この数年で8200部隊を「ベールに包まれた」としながらも、その存在がハイテク国家イスラエルを支えてきたゆえんとして語られる機会は圧倒的に増えている。
「世界一のモノづくりの技術を持つ日本と、イスラエルのイノベーションが掛け合わされれば最強だと信じています。つまり、日本のすばらしいハード技術とイスラエルのソフトウエア開発能力をうまく融合させ、世界に通用する新たなベンチャーを生み出したい。イスラエルのスタートアップと日本企業のネットワーキングプレイスをここ日本に作り、投資だけでなくて一緒に戦略的なパートナーシップを育んでゆくのが夢です」(ヨアブ)
今年、東京・港区に小さなオフィスを立ち上げたヨアブ。訪れた時はまだ、たくさんの段ボールが積まれ、「すみません、片付いておりませんが……」と恐縮しながらも、目を輝かせながら語った夢は、実に大きかった。
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