家賃滞納が今の日本で増えている深刻な事情

背後には貧困の連鎖、親子の断絶も

親に結婚を反対されて家を出て2人で暮らし始めたものの、夫婦ともに精神疾患を患い、失業して家賃が支払えなくなる人たちも少なくない。しかも、彼女が妊娠中という例もあった。

この時には太田垣氏が付き添って両家の親たちと話し合いの場を持ったものの、実家に戻れ、中絶しろと主張する親と意見が合わず、結局、2人は行政を頼って生活保護を受給することになり、転居していったそうだ。

男性の場合には失業や引きこもり、精神疾患などで実家に戻ってくると世間体が悪いと考える親が息子に一人暮らしをさせていたものの、そこで滞納が発生というケースが目立つ。

「親は元校長で地元の名士。息子は大手企業に勤めていたのに脱サラして、起業に失敗。地元に戻ってきてほしくない親は滞納の度に払い続けてきましたが、高齢になって払えなくなった。そこで息子を退去させることになったのですが、40代を過ぎるまで自立できなかった子どもはもちろん、世間体優先できた親にも責任があるのでは。情けない話です」

滞納者を説得し、人生にかかわる

この男性は強制執行で出て行ったそうだが、日本では住む場所がなくなると生活に大きな支障を来す。日本のほぼすべての書類には住所を書く必要があるからだ。それが書けないとしたら仕事を見つけるのはもちろん、新たな携帯電話すら手に入れられない。前述のようにずる賢く立ち回れる人もいるが、それ以外の滞納者にとっては、強制執行は大きなペナルティなのである。

そのため、太田垣氏は可能なかぎり、滞納者にかかわり、強制執行を避けようとしている。任意退去のほうが大家の負担が少ないということもあるが、滞納者に傷がつくのを避けられるだけでなく、可能であれば金銭感覚や親子関係を変え、人生をやり直してほしいと考えているからだ。

明け渡し訴訟を弁護士に頼む場合、物理的なやり取りはほぼ必要ない。こうした中、現地に赴いたり、滞納者と話をしたり、親との話し合いを調整したり、さらには、生活保護申請に同行したり、といった訴訟に関係のない雑務をやっているのは、おそらく日本広しといえど太田垣氏くらいだろう。

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