スバルの検査不正、報告書提出でも残る疑問 隠蔽行為も発覚、「昭和な会社」は変われるか

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SUBARUは無資格の従業員が完成検査をしていた問題で最終報告書を国土交通省に提出した。会見で吉永泰之社長は「企業体質を根本から改める」と話したが、歯切れが悪い印象も残した(撮影:尾形文繁)

自動車の出荷前に行う完成検査で30年以上不正を行っていたSUBARU(「スバルでも無資格検査、30年以上常態化の謎」)。同社は12月19日、最終報告書を国土交通省に提出し、再発防止策を発表した。会見で、吉永泰之社長は「スバルの問題点に迫っているものだ」と述べた。しかし、報告書の中身は本当にスバルの問題の本質に迫るものだったのか。

今回の報告書は、外部の弁護士約30名が、スバルの従業員や役員あわせて434名に聞き取り調査を実施。また、完成検査員322名(登用前を含む)にアンケートを行い、事実関係の調査を行った。資格のない完成検査員(登用前検査員)による完成検査や、正規の完成検査員のハンコを使い回す代行押印といった不正は、1980年代には始まっていた可能性があり、少なくとも1990年代からは常態化していたことを指摘している。

完成検査で新たな不正が明らかに

スバルの吉永社長は国土交通省の奥田哲也・自動車局長に完成検査不正に関する報告書を提出した(記者撮影)

さらに今回、完成検査に関して新たな不正が明らかになった。社内外の監査が入る場合に一時的に登用前検査員をラインから外す、いわば「隠蔽行為」が行われていた。また、完成検査員の資格を取得する際に行う講習では規定時間を達成できていなかったり、修了試験でも事前に答えを教えていたりした「ずさんな運用」も浮き彫りになった。

報告書は、「完成検査員の大部分が『登用前検査員については習熟度の見極めが行われており、検査に必要となる技術の十分性には問題がない。』などとして、・・・『検査に必要な技術を備えてさえいればよい。』という過度な技量重視の風土と、・・・ルール軽視の姿勢が認められる。」と不正を招いた問題点を指摘している。

登用前検査員でも行える「補助業務」の拡大解釈により、「100%習熟度」があると判断された者は、単独で完成検査を実施できるようになっていた。日産自動車同様、「見極め」という明文化されていない独自の運用がなされていた。これが年月を経て習慣化するほど、完成検査が、政府から委託された重要な検査工程であるという自覚が薄くなっていった。

次ページ吉永社長が語ったスバルの企業風土とは
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