スバルの検査不正、報告書提出でも残る疑問 隠蔽行為も発覚、「昭和な会社」は変われるか

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スバルの群馬製作所(群馬県太田市)で行われている新車の完成検査。30年以上、無資格の従業員が検査業務に携わっていた不正の舞台となった(編集部撮影)

吉永社長は、「会社に40年いるとわかるが、良くも悪くも昭和の会社だ」と自社の企業体質を指摘する。その上で、「前例踏襲主義で改革的でない」部分にも原因があると語った。経営陣と現場とのコミュニケーションが不十分なため、現場の問題に気付けなかったことにも反省を示した。

スバルは再発防止に向けて、完成検査の規定や人事、設備などに関する管理体制強化を打ち出した。その上で、品質保証本部長を務める大崎篤執行役員は、「一人ひとりのコンプライアンス(法令順守)意識を育てなければ意味がない」と、組織風土改善の必要性を強調した。

吉永社長は「これまでも風土改革はやっていたし、現場との距離は近いと思っていた。風土を変えるというのは、本当に大変なことだ」と話す。その上で、「会社の体質を根本的から変えていく」として、自らが先頭となって役員全員(社外取締役・監査役除く)の報酬の自主返納を今月から2018年3月まで行うことも表明した。

不正が始まった経緯は確認できず

しかし、なぜこうした悪しき習慣が始まったのか、不正のきっかけは何だったのか、肝心な疑問の答えはわからずじまいだ。報告書には「始まった明確な時期および経緯は確認できなかった」と記されている。会見ではこの点にも質問が及んだが、吉永社長からも明確な答えはなかった。

会見の終盤では記者からの厳しい質問に対し、吉永社長が答えに窮する場面もあった(撮影:尾形文繁)

不正発覚時に行われた10月の会見で「(原因追及を)ちゃんとしたい」という言葉を繰り返していた吉永社長だが、今回の会見では、ところどころ歯切れが悪い印象があった。前回、「完成検査以外でも社内のあらゆる部門で見直しを行い、同様の不正が起きていないかの調査をする」と語っていたが、今回進捗を尋ねられると「まだ調査していないのでわからない」と言葉を濁した。

会見の終盤では、記者から「この報告書では現場がルールを二の次にしたことを問題視している。では経営陣は何を重視して仕事をしてきたのか」と問われると、答えに詰まり沈黙する場面もあった。

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