映画「IT/イット」が若者を引きつけるワケ 「スタンドバイミーのホラー版」はあえて封印

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宣伝ではそうした余分な情報を押える一方で、露出は逆にSNSを中心に増やしていった。YouTubeやTwitter、LINE、インスタグラムなどに徹底的にプロモーションをし、さらに、「#ピエロ目撃Twitterキャンペーン」と銘打って、実際に街中にピエロの格好をしたスタッフを歩かせ、若者達に見つけてもらう活動を行なった。

落ちこぼれ集団「ルーザーズクラブ」の子ども達が、勇気を出してピエロと対峙する姿は、恐怖を超えて感動できる  (C)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

そのうえでテレビスポットCMを効果的に打ち、盛り上がっている雰囲気を醸成していったという。

宣伝も、ただ内容や面白さを伝えるのではなく、「YouTubeで予告解禁24時間以内に史上最多の1億9700万の再生回数を記録」と、ネット上での盛り上がりを強調した。

「最近は、宣伝くさくなると若者が避ける傾向がある。そのバランスには気をつかった」(吉田シニアマネージャー)

「R15+」指定もプラスに

さらに15歳未満が見ることができない「R15+」指定になったことも、プラスに考えた。「年齢規制が入るということは、それだけ怖いということ。高校生にとっては、『観られるのは大人になった証拠』と考えてもらうこともできる」(大木氏)。

日本以外でもヒットしており、ホラー映画としては『シックス・センス』(1999年)の世界興収6.7億ドル(約760億円)を抜き、12月13日時点で、6.9億ドル(約780億円)と、ホラー映画としては歴代最高の興収記録を更新している。

作品そのもののクオリティーは元から高かった。しかし米国で人気でも日本では人気がない作品が多く、良質な作品をしっかりと観てもらえるようにするは、工夫が必要になってきている。

「最近はなにかひとつだけ突出しているような作品でないと振り向いてもらえない」(大木氏)。新しいモノを求める今の若者に、いかに作品の良さを知ってもらえるか、映画界の模索は続いている。

宇都宮 徹 東洋経済 記者

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うつのみや とおる / Toru Utsunomiya

週刊東洋経済編集長補佐。1974年生まれ。1996年専修大学経済学部卒業。『会社四季報未上場版』編集部、決算短信の担当を経て『週刊東洋経済』編集部に。連載の編集担当から大学、マクロ経済、年末年始合併号(大予測号)などの特集を担当。記者としても農薬・肥料、鉄道、工作機械、人材業界などを担当する。会社四季報プロ500副編集長、就職四季報プラスワン編集長、週刊東洋経済副編集長などを経て、2023年4月から現職。

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