AI半導体「エヌビディア」は何がスゴいのか トヨタやコマツが頼る新たな巨人の実力

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工作機械大手のファナックは、機械をネットワークやクラウドにつなぐことで、稼働データを吸い上げ、分析し、生産性向上を目指すシステム「フィールドシステム」でエヌビディアの技術を採用。機械にはエヌビディアのGPUを搭載し、バラ積みや異常検出、稼働停止ゼロに向けAIソフトウェアを開発している。

今回のイベントでは、新たに建設機械最大手、コマツとの協業も発表された。建機にエヌビディアのGPUを搭載し、建機の周りにいる人や機械を即時に検知する。1年で300人近い死者が出るという建設業界での事故の防止を目指す。将来的には、機器の自動制御や仮想シミュレーションにも利用していくという。

フアンCEOはより遠くの未来を見据えている(撮影:梅谷秀司)

フアンCEOがさらに先の未来も見ている。「自動車だけでなく、将来的にはあらゆる機械が自律動作の機能を持つようになる」。現場から離れた場所でVRで機械を遠隔操作したり、フォークリフトをまるで自分の腕とつながっているかのように頭で考えるだけで動かしたりできる世界だという。

テレビゲームで磨いたGPUの実力

GPUはなぜAIに適しているのか。従来GPUは、PCやゲームの分野で画面上に画像を表示するために使われてきた。3次元の画像や高画質の画像を表示するには、大量の情報を処理しなければならない。CPU(中央演算処理装置)だけでは処理できない作業を補完する部品として、画像の高速処理に特化してきた。

その性能は数字を見れば明らかだ。CPUで画像を処理する場合、1秒間に処理できる画像の枚数は約5枚。それに対し、エヌビディアの最新GPUを用いると1秒間に900枚もの画像を処理することができる。

AIの処理に適したエヌビディアの最新型GPU「テスラV100」(写真:エヌビディア)

エヌビディアは、そうした単純作業を高速に処理できるGPUの利点に注目。複雑な画像の表示だけでなく、ほかの作業にも活用できるようにした。

AI技術で主流になりつつあるのが、人間の脳の構造を手本にして大量のデータを分析し処理能力を高める「ディープラーニング」だ。たとえば人間の顔の画像データを大量に学習させれば、さまざまな画像からAIが人間の顔を見分けられるようになる。

GPUを用いることで、通常1年ほどかかるディープラーニングの処理を1カ月程度で終えることができ、開発効率を大幅に向上させることができる。今やGPUはAIに欠かせない技術となっている。

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