AI半導体「エヌビディア」は何がスゴいのか トヨタやコマツが頼る新たな巨人の実力

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自律動作の分野に注力していくうえで、エヌビディアは日本市場に目をつけた。「日本の時代がやってきた。日本には、自動車、ロボット、建機それぞれのリーダーとなる企業がある」(フアンCEO)。

そのうえでフアンCEOは、「AIは、過去10年間で技術が飛躍的に向上したセンサーやモーターといった部品の”橋渡し”的存在になる」と語る。センサーで検知した情報を基にモーターを駆動させるうえで、AIが頭脳として指示を出す役割を担うようになるというわけだ。トヨタやコマツの例にとどまらず、今後も日本企業との協業を拡大していく方針だ。

AI向けの半導体市場は現状、エヌビディアが一歩リードしている。しかし、王者インテルはAIに有用といわれる「FPGA」と呼ばれるチップを製造する米アルテラ、自動運転向けの画像認識に強いイスラエルのモービルアイなどを続々と買収。クラウド上でAIサービスを提供するグーグルも、自社のサーバーで用いる深層学習専用チップ「TPU(テンサー・プロセッシング・ユニット)」を発表。開発競争は激しさを増している。

これからはソフトウエア開発も重要に

さまざまな分野にAIの活用を広げるには、チップの演算能力を上げるだけでなく、アプリケーション(機能)を増やすことも重要になる。GPUの場合、チップに搭載するソフトウエアを開発するだけでこれを実現できる。ただ、フアンCEOは、「他社が注力するFPGAの場合、(機能を追加するために)新たな設計が必要。それに1年かかる。1年あれば、GPUのソフトウエアの性能は20倍になる」とGPUの利点を説明する。

フアンCEOは自社のソフトウエア開発体制を強調した(撮影:梅谷秀司)

フアンCEOが「アプリケーションの能力は75%がソフトウエアによるものだ」が述べるとおり、エヌビディア社員の約半数はソフトウエア開発者で、力の入れようがわかる。今やエヌビディアはただの「半導体メーカー」ではなくなっている。

今後AIはあらゆる製品に搭載されるだろう。だがフアンCEOは、「われわれはつくるのが難しい複雑なものに挑戦していく」としている。「スマートコーヒーマシーン(のような比較的単純な処理で済むもの)はほかの人に作ってもらえばいい」(同)というように、自動車やロボットなど複雑な処理が求められる分野に焦点を当てている。

競合は大規模な買収で拡大を続けているが、全く興味を示さない。「だれかが既にやっていることは、その会社に任せる。エヌビディアは他社がやっていないことをやる」(フアンCEO)。独自路線を貫くようだ。

エヌビディアは、現在の勢いのままAI半導体の覇者となれるだろうか。日本市場の攻略は、そのための重要なカギとなりそうだ。

藤原 宏成 東洋経済 記者

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ふじわら ひろなる / Hironaru Fujiwara

1994年生まれ、静岡県浜松市出身。2017年、早稲田大学商学部卒、東洋経済新報社入社。学生時代は、ゼミで金融、サークルで広告を研究。銀行など金融業界を担当。

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