埼京線「集団痴漢」事件で見えた異様な実態 声をあげられない女性側の心理
かつて声を上げられずに長い間、痴漢被害に遭ったという都内在住の山村由紀さん(仮名、24)に話を聞いた。
「高校生のころ、半年ほど通学時にほぼ毎朝、被害に遭っていました。気づくと私の後ろにいる。他の車両に移動してもついてくる。いつになったら終わるのか、ずっと怖くて不安でした。ブラウスの中に手を入れられ胸をもまれたり、性器にまで……触り方もエスカレートして、もうめちゃくちゃ気持ち悪かったです」
封印していた忌まわしい過去に、悔しい表情を浮かべる。
「周囲には、私みたいな地味な女が痴漢に遭うんだと思われるんじゃないか、笑われるんじゃないかと思ってしまい、助けを求められませんでした。
当然、友達にも親にも誰にも相談できなくて……。痴漢に遭っているとき誰かに見られてないか、大丈夫かなという気持ちがあって、すごく嫌で恥ずかしかったです」
集団痴漢は「レイプと同じ」
山村さんが捻挫して松葉杖で通学するようになると、善人面をして“大丈夫ですか”と声をかけて堂々と身体を触っていたという憎き常習犯。
「本当に屈辱的で、ぶんなぐってやりたかった」という山村さんは、ある日、覚悟を決め電車が乗換駅に着いたとき、男の腕を取り「この人痴漢です!」。周囲の人が協力し、駅員に引き渡したが、駅員室に向かう途中、逃げてしまったという。
「勇気を出して捕まえたのになんで……。駅員さんも“すみません”って言うだけ。裁かれることもなく、今ものうのうと生きていると考えると本当に悔しい。ほかの人が被害に遭っているかもしれない。今も許せません」
と語気を荒らげる。今回の集団痴漢事件については、
「女性を囲んで触るなんてレイプと同じですよ。誰にも言えずに悩んでいる人は多いと思います。しっかりした対策をしてほしいです」
監視カメラや周囲の目をかいくぐる痴漢から身を守るにはどうしたらいいのか。
警視庁によれば2016年中に都内で発生した痴漢件数は約1800件。その約7割が、駅や電車内で発生している。
痴漢が狙わない服装・雰囲気
いくつかの対策を、前出の佐伯さんがアドバイスする。
痴漢は、被害時に抵抗しそうな自己主張が強そうな女性を避ける傾向にあるため、
「個性的な服装や目立つ服装は、狙われにくいですね。被害者がこれ以上の被害を避けるためにあえてゴスロリ(ゴシック・アンド・ロリータ)ファッションをしている人もいます。周囲の人が注目するため、痴漢も手を出せない」