千尋の谷へ突き落としてこそ、子は成長する 厳しくない愛は、愛ではない

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世界の勇気ある優しい人々

最近の新聞で、第2次大戦中のアメリカはコロラド州のラルフ・カー知事のことを知りました(前駐米大使、藤崎一郎氏の紹介)。「日系米人に危害を加えるなら、その前に私をやれ」。

「カーは別に日本や日系人びいきだったわけではない。米国の憲法上、出身国による差別は認められないという信念の持ち主だった。他州の知事が排斥した日系人も受け入れ、州民の反発を呼び、カーは落選。それでも考えを変えなかった」

また関東大震災のときに発生した虐殺行為から多くの朝鮮の人々を救った、大川巡査を思い出します。大川さんは「朝鮮人をやるなら、まず私をやれ」と、派出所の狭い2階に300人もの朝鮮の人々をかくまい、デマに惑わされて引き渡しを要求する民衆に、断固とした態度で立ちはだかり、拒否しました。

今も、あの映画のテーマ曲を聴くだけで胸がキュンとなる「シンドラーのリスト」のオスカー・シンドラー。そして日本のシンドラーと呼ばれた杉原千畝氏。杉原さんは本国の意に反して、6000人ものユダヤ人に日本通過のビザを書いて、リトアニアからの脱出を手助けした外交官として有名です。イスラエルでいちばん名誉のある「諸国民の中の正義の人賞」をイスラエルから贈られています。

自身の利益や生命を顧みずに、極限の状態で他人に優しくあれる強さは、誰もが持てる強さではありません。しかしわが子を愛すからこそ厳しくしつけ、せめて他人に迷惑をかけないよう、そしてできれば肝心な局面で他人に優しくできるように、千尋の谷とまではいわなくても、時に厳しく突き放して、愛情を注ぐ大切さを忘れないようにしたいものです。

実写映画「キタキツネ物語」では、親ギツネが、自立にむけて旅立つ子ギツネを、丘の上から見守るラストシーンは、涙なくしては見られません。動物でもヒトでも、子供を思う親心は深いほど、親にとっても子供にとっても、厳しさを伴うものであることを、教えてくれている映画でした。

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ミセス・パンプキン 『最強の人生相談』『一流の育て方』著者

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立命館大学卒業。ビジネスパーソン向けの家庭問題・人間関係・人生相談の専門家として、東洋経済オンラインで2012年より執筆。最新刊は『最強の人生相談』(東洋経済新報社)。息子であり、『最強の働き方』(東洋経済新報社)の著者であるムーギー・キム氏との共著に、『一流の育て方 ビジネスでも勉強でもズバ抜けて活躍できる子を育てる』(ダイヤモンド社)がある。ミセス・パンプキンへの相談は、こちらのメール、あるいは相談受付サイトで受け付けています。なお相談件数多数につき、過去に類似する相談があった場合には取り扱いません。ぜひ、これまでの連載をご参照ください。男性からのご相談も歓迎しております!

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