「天使のブラ」トリンプが苦境にあえぐワケ 直営店の減少に赤字決算、社長の後任も未定

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英調査会社ユーロモニター・インターナショナルによると、16年のファストリの国内女性用下着シェアは20.2%と5年前から約6%増加し、首位のワコールに肉薄している。一方でトリンプは7.7%と、ここ5年は横ばいが続いている。

それだけではない。あるアパレル幹部は「カリスマ的存在だった吉越浩一郎社長の退任以降、日本法人は経営指揮を執りづらくなっていたようだ」と話す。

トリンプが日本市場で存在感を高めたのは1992〜06年の、吉越氏が社長だった時代。生産性向上を目的とした残業削減に加え、早朝会議や最新物流機能の導入などの改革を次々と断行した。経営を担う前までの赤字体質から脱却し、増収増益を続けた。

株主交代で潮目が変わった

今回取材に応じた吉越氏は当時の状況を、「グループ全体の売上高の25%近くを日本が稼ぐまで成長し、本社も自分に経営を任せてくれていた。その分、日本の市場に合った事業戦略を展開できた」と振り返る。

だが、吉越氏の社長退任前に潮目が変わった。トリンプ本社の株主が交代したのだ。その結果、「日本法人に対して、本社の介入が増していった」(当時を知る関係者)。低価格かつ高機能を重視する市場変化にも柔軟に対応できず、競合の台頭を許した。

吉越氏の退任以降、2度の社長交代を経て、10年にはリーバイ・ストラウス ジャパンから来た土居健人氏が社長に就任したが、その土井氏も12月31日付で退任する。人選に時間がかかり、後任は未定という。次期社長が決まらない中、かつての勢いを取り戻すのは容易ではない。

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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