トランプ政権「怒濤の規制緩和」に漂う不安 人事権から伝家の宝刀までフル活用
しかし、トランプ政権下での急速な方針転換には、一抹の不安をもらすビジネス関係者が少なくない。規制行政が政治的に大きな対立点となった結果として、今後の規制の一貫性が危ぶまれるからだ。
トランプ政権下で規制緩和に舵が切られたとしても、ひとたび、民主党が実権を握れば、今度は一転して規制が厳しくなりかねない。また、金融危機後の規制強化は、金融の安定性に一定の貢献があったのも事実である。ビジネス界としても、ある程度の調整は歓迎するとしても、振り回されるだけの劇的な変化は望んでいない。
民主党がこの動きを利用する可能性も
実際に民主党は、トランプ政権による規制緩和を、来年の中間選挙などで大きな争点にしていく方針だ。トランプ大統領は、自らが裕福であるために、「企業から金銭的な支援を受ける必要がなく、国民目線で政治ができる」ことをセールス・ポイントにしてきた。民主党にいわせれば、トランプ政権による一連の規制緩和は、大統領が企業の言いなりであり、大企業優遇の政治が行われている証左だ、ということになる。
CFPBの異常事態にも、政治の影がみえる。かねてコーデレー前局長には、政界進出の噂があった。トランプ政権が必ず反発するであろう後任を指名したのは、あえて大きな騒動にすることで、政治的な知名度を高める狙いがあったとも言われる。
実際にコーデレー前局長は、辞任後にオハイオ州知事選挙への出馬を表明している。また、トランプ政権の規制緩和を厳しく批判するウォーレン上院議員については、2020年の大統領選挙への出馬を予想する向きもある。
ビジネス界が望むような安定的な規制行政を担保するためには、党派による立場の違いを調整し、政権交代による方針の激変を緩和する工夫が必要かもしれない。CFPBについても、大統領指名による局長が強大な権限をもつ現体制ではなく、超党派の理事会による運営体制への変更を求める動きがある。
もっとも、来秋に中間選挙が控える米国は、これから本格的な政治の季節を迎える。規制を巡る党派間の諍いは、ますます激しくなりそうだ。
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