トランプ政権「怒濤の規制緩和」に漂う不安 人事権から伝家の宝刀までフル活用

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「それは心配だ」

民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は、トランプ政権がFRBの次期議長に指名したジェローム・パウエルFRB理事の指名承認公聴会で、鋭く釘をさした。パウエル理事が、現在の金融規制について、「十分に厳しい水準にある」と発言したことへの反応である。

ドッド=フランク法に代表されるように、金融危機後の米国では、金融規制の強化が進められてきた。FRBでは、オバマ政権が指名したダニエル・タルーロ前理事が実質的に金融規制強化の指揮をとってきたが、トランプ政権下ではパウエル体制が走り出し、その陣容は様変わりする。

「伝家の宝刀」を最大限に活用

タルーロ前理事は2017年4月に退任しており、これまで空席だった金融規制担当の副議長には、共和党のジョージ・W・ブッシュ政権で財務次官を務めたランダル・クオールズ氏が着任している。

FRBの外に目を転じると、連邦免許を受けた商業銀行を監督する通貨監督庁(OCC)の新しい長官には、ジョゼフ・オッティング氏が決まっている。かつてスティーブン・ムニューシン財務長官が会長だった銀行で、最高経営責任者(CEO)を務めていた人物だ。

また、証券会社を監督する証券取引委員会(SEC)の委員長には、ウォール街で金融機関の弁護士として活躍してきたジェイ・クレイトン氏が選ばれている。さらに、商品先物取引委員会(CFTC)のクリストファー・ジャンカルロ新委員長も、同委員会が管轄するデリバティブ業界との結びつきが強いと言われる規制緩和派である。

トランプ政権は、人事以外にも、あらゆる手段で規制緩和を進めている。象徴的なのが、議会審査法(CRA)による規制の廃止である。1990年代に制定されて以来、一度しか使われなかった「伝家の宝刀」を、トランプ政権は最大限に活用している。

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