3Dプリンターへの大きすぎる期待と現実 製造業以外に大きな潜在市場
新たな用途見いだせる人材が必要
実は、成長が期待されているマーケットは製造業ではなく、非製造業にある。大量生産には向かない非製造業にこそ、3Dプリンターが発展する余地があるという。
芝浦工業大学大学院工学研究科・教授の安齋正博氏は「高精度な3Dプリンターを導入し、すでに確立されている製造業のプロセスの一部を置き換えるのはナンセンス。製造業にこだわる必要はなく、医療やアパレル、食品など他業種と結びつけることが重要だ」と指摘する。
米調査会社ウォーラーズ・アソシエイツは、3Dプリンターの世界の市場規模は2021年に108億ドル(約1兆0900億円)と12年実績比で約5倍に拡大するとの予測を示している。
そのために欠かせないのが人材育成だ。既存の製造装置を置き換えるのではなく、新たな用途を見出すためには、新鮮なアイデアと技術を持った人材が必要になる。「教育現場に3Dプリンターが導入され、10数年後に柔軟な頭脳を持つ人々が第一線に立てばイノベーションが起こるかもしれない。そのとき産業構造が変革する可能性はある」と、ジェイ・エム・シーの渡邊氏は述べる。
米国ではオバマ米大統領が2012年8月、民間企業や大学機関、非営利団体などで構成された全米積層造形技術革新機構(NAMII)を設立した。また、今後4年間で1000カ所の学校に3Dプリンターなどを完備した「工作室」を開く計画も打ち出している。
欧米に続き中国やシンガポールなど新興国も相次ぎ参戦するなか、日本の対応は急務だ。「海外からの視点だと、日本の3Dプリンター市場は生産拠点というより販売市場との見方が強い」と日本貿易振興機構(JETRO)の海外調査部北米課長、黒川淳二氏は指摘する。
開発競争に乗り遅れてしまえば、3Dプリンター市場も海外勢の「草刈り場」になってしまうおそれがある。
(杉山 容俊 編集:伊賀 大記
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