自分の状況は今日よりも明日はもっとよくなるはずだと信じてやまず、社会全体がその波に乗っかっている。まさにバブル真っただ中の心情だ。
このような女性像が生まれたその背景には、この地域で起きている社会的な変化があるという。まずは、経済成長。そしてもうひとつは、個人のライフスタイルの変化だ。
今、東南アジアではインターネット、特にフェイスブックの浸透により、情報が国境を超えて共通化しやすくなっている。加えて、LCC(ローコストキャリア)が台頭し、違う国籍の人の体験も共通化しやすくなっている。そのため、宗教や家族のような今まで根差してきた旧来的な価値観と新しい価値観とが同居し、ライフスタイルはモダンなものに変わりつつある状況が形成されているのだ。
結果、東南アジアの女性像を形容するものとして、ポジティブ、オプティミスティック、アクティブ、ハイエデュケイティッドなど、極端なほどに前向きなキーワードがワークショップでは抽出された。
日本市場へ投入されている商品のうち、当初から東南アジアで投入されたのはドライヤー、スチーマー、まつげカーラー、歯ブラシの4つだった。なぜ絞られたのか。
東南アジアの規格に合わせたローカライズ戦略
東南アジアで日本の電化製品を展開する際の大きな障壁が「規格」だ。日本の電化製品が対応できる電圧が100ボルトなのに対して、東南アジアは200ボルト。たとえ日本で好調な製品であったとしても、海外の規格にフィットしない商品もある。取捨選択せざるをえないのだ。
一方、ボリュームゾーンを占める注力商品であるドライヤーは、東南アジアの規格に合うようイチからタイの工場で作り直した。日本では1200ワットだが1000ワットのものを作り、価格は3分の2に抑えた。価格は市場の物価水準や競合商品と機能などを比較し決定される。検討した結果、その価格では需要がない、利益が出せないため、商品を出せないという場合もありうる。たとえば、同社が東南アジアに投入しているフェイシャルスチーマーは、日本ではラインナップのいちばん下のモデルにあたる。
こうして製造された商品はタイから各国の港にある販売子会社の倉庫に運び込まれ、そこから家電量販店に輸送される。
プロモーションでは、前出の女性インサイトを踏まえ、“BEAUTY OF EMPOWERMENT”というタグラインを開発し、テレビコマーシャルと店頭販促を展開。EMPOWERMENTという言葉は、クレジットカードのようなステータスのある金融商品の広告に使われるような、ややあおりを感じさせる言葉だが、それが東南アジアの今の女性にはまった。
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