「太っているけど健康な人」は本当にいるのか

心疾患になりやすいというリスクがある

その一方で、冠動脈心疾患のリスクという点では、「太っているかどうかよりも、(代謝的に)健康かどうかのほうが重要」であることがわかってきた。ただしそれは、中程度の肥満の人の話。「過体重あるいはやや肥満ぎみの人の場合、代謝的に少しばかり問題があるからといって、人生おしまいというわけではない」と、ラビーは言う。

運動が体にいいことは変わらない

バーミンガム大学のカレイアシェティは、今回の研究に、健康状態と運動量に関するデータが含まれていないことは、「大いに留意する必要がある」と認める。「代謝的に健康な肥満で、極めて活動的な人は、心疾患リスクがもっと低いかもしれない」。

それならそう強調してくれないと、と批判派は言う。多くの人にとっては、体重を減らしたり、減らした体重を維持することに力を注ぐよりも、運動管理療法を試して、それを続けることのほうが簡単だからだ。

「確かに(単に運動を推奨するほうが)『太ってはいけない』というメッセージを送るよりもいいと思う」と、レビーは言う。「誰も太りたくて太るわけじゃない。もっと活発に体を動かせば、少しばかり太っていても、予後を改善できるというほうが、メッセージとして優れている。それに達成可能なメッセージでもある」。

これに対して、アリゾナ大学癌センターのジェニファー・W・ビー助教は、「まだ全容はわかってない」とし、「代謝的に健康な肥満」という考えに疑問を呈する。「肥満は代謝異常だ」。過体重や肥満は、心疾患につながる軽度の炎症と関連づけられると、ビーは指摘する。

もちろん体重が何より重要な指標というわけではない。カレイアシェティらは、体重は正常だが糖尿病、高血圧、あるいは高コレステロール血症のリスク要因がある人は、健康な肥満の人よりも冠動脈心疾患のリスクが高いことを明らかにしている。

「世の中には『とにかく体重を減らせ』というメッセージがあふれているが、正常な体重の人向けの生活アドバイスは少ない」と、カリフォルニア大学バークレー校の公衆衛生大学院の疫学者パトリック・ブラッドショー助教は言う。「医者は、『運動をして正しい食生活をしろ』というかもしれないが、代謝異常がある人は疾病リスクが高く、ライフスタイルをもっと劇的に変える必要があるかもしれない。体重を減らすためでなく、健康状態を改善するためにね」。

カレイアシェティらの論文で重要なメッセージの1つは、「健全な代謝は、体重に関係なく重要だということだ」と、ブラッドショーは語る。

それは痩せぎみの人にもいえる。今回の研究では、たとえば低体重の人は、正常な体重、過体重、さらには肥満の人よりも脳卒中リスクが高いことがわかった(いずれも代謝異常がない場合)。低体重で代謝に異常があると、そのリスクはもっと高まる。

過体重と肥満のリスクは大いに研究されているが、痩せすぎのリスクは専門家にもあまり注目されていないのが現状だ。

(執筆:Roni Caryn Rabin記者、翻訳:藤原朝子)

© 2017 New York Times News Service

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